第8章 若葉のころを過ぎても
【A】
「翔。このあと、暇?」
帰り支度をしている翔に話し掛けた。
幼稚園からずっと一緒の学校に通う、幼馴染みの翔。
俺の、初恋。
男同士なのに、可笑しいって悩んだときもあったけど…。
距離を置いてみたりもしたけど…。
やっぱり、離れたくなかったんだ…。
翔「いや、あの…」
「あ、なんか用事がある?」
翔が、左ほほを人差し指でポリポリと掻いている。
これは、翔が隠し事や嘘をついているときにでるクセだ。
そして、口数が少なくなる。
翔「………」
なーんか、俺に隠してるな?
目も合わせてくれなくなった。
わかりやすすぎっ!
「家のこと?」
翔「あ、そうそう。あの、えっと…父さんが、早く帰れって、言ってた気がするな…」
「そっか。それじゃ、帰るか?」
翔「お、おう。か、帰り、ますですよ?」
ますです? 動揺しすぎだろ?
はは。本当に、わかりやすっ!
急いで着替えて、翔を尾行した。
ホテル?こんな高いところに何があるんだ?