第8章 若葉のころを過ぎても
待ち合わせ時間より、早めに着いた。
大野くん来るまで、ゲームでもしてるか。
スマホを取りだした。
ん?
今のって…?
ホテルに入っていく人の中に、父さんがいた…?
いや…似てる人、だよな?
今日は、大阪に出張だって言ってたし。
でも、似てたな…。
智「ごめん。待った?」
「ううん。俺も、今来たとこだから」
大野くんの顔が、赤くなった。
どうしたんだろ?
「走ってきたの?」
スマホを鞄に入れて、ハンカチを取りだして渡した。
智「ううん。何で?」
「顔が赤いし、汗もでてきたから。使って」
大野くんが、「ありがとう」ってハンカチで汗を拭いた。
そんなに、慌てなくても良かったのに。
「それじゃあ、行こう」
智「おう。楽しみだあ」
大野くんが、ふわふわと笑う。
ふふふ。誘って良かった。