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君と共に

第15章 真穂の真実


エレベーターが5階で止まる。
急いでナースステーションに場所を聞き、走っちゃダメ!のお知らせを横目に、ダッシュした。
一番奥の個室に、「鈴木 真穂様」と書かれたネームプレートがあった。
一呼吸置き、コンコンと扉に合図をした。
返事がない。
扉を音もなくスライドさせ、1人で寝ている彼女へ歩み寄る。
今まで窓を見ていた彼女は、こっちを向き驚いた。
俺は無言でベッド横の椅子に体重をかけるように座る。
「なんで、一樹くんがここに!?」
いつも通りの声に安心したのか、さっきまで苦しかった痛みがほどけ、涙となり目からこぼれた。

「なんで、自殺なんかしようとしたんだよ!」
すすり泣きのせいで、思ったより迫力が出なかったが思いは伝わったようだ。
「心配かけてごめんなさい。」
真穂は少しだけ、頭を下げた。
「心配したぞ、このばか!」
悪口と同時に、頭に手を乗せ撫でた。
無意識といっていいほど、優しく優しく撫でた。
真穂はされるがまま、だったが次第に体が揺れる。
ベッドの掛け布団に一つ、二つ三つほどシミが出来るのを見て、ようやく同じ状態であることがわかった。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。」
何度も謝る真穂に頭を撫でること以外出来なかった。

時計の秒針が何周かしたほど、真穂は落ち着き涙を拭いた。
「ごめんね、みっともない姿見せちゃった。」エヘヘ
いつもみたいに、笑う。
この笑顔にいつからか、癒しと可愛さを覚えてしまった。
最初はそんなこと微塵も思わなかったのに、なんて今は口にしてはいけない。
「とりあえず、元気になってよかったよ。」
「これからは、泣いたら頭撫でてー?」ニコ
「まぁ、たまになら、な。」
登校したかのような気持ちになった。
日常。いつもと同じ時間。
いつからか、それが当たり前に楽しいって思える。
間違いなく、鈴木のおかげで。
こっちも笑うと、鈴木も笑った。
「ねぇ?」
声に呼ばれ、顔を見上げた直後、

………。

俺と真穂の唇が一つになった。
目を開けて状況確認したが、真穂はまだ目を閉じたままだった。
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