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君と共に

第14章 終わりに近づくその日まで


朝が来てしまった。
残念な気持ちが真っ先に思い浮かび、体を抑制している。
鎖にでも縛られてるかのように、腕と足に力を込めてもほぼ動かない。
実際には力をいれてるつもりで、留まっているからであろうけども。
スローモーションみたいにベッドから動く。

気だるい朝の支度中にふと、携帯電話を開きメールボックスを開いた。
同じ宛名の手紙が何通も来ていた。
「あ、鈴木に返信するの忘れてた。」
昨日の楽しい時間には鈴木のメールは必要ないと思い、見ていなかった。
中身を一個ずつ開いては流し読み。
いや、それすらも怪しいほどさーっと流していたが…

「一樹君、もう私、ダメみたい。」

この一文に目を止めた。
それは何通も来ていた中で、2番目に新しいメールであった。
「ダメ…ってなんだ…?」
起床後の頭脳はそんなに回転しないが、可能な限り動かす。
そして、楓の一言を思い出す。
「まさか、あいつの体になにか!」
登校の準備そっちのけで、家を出るがすぐに立ち止まった。
楓。
目の前に真剣な顔で待っている。
「おはよ、一樹。」
「あ、おはよ。どうしてここに?」
「いくよ。」
突然腕を捕まれ、楓が歩き出す。
明らかに昨日とは違う態度で、困惑しつつも大人しく連行される。
早歩きで黙々と未知なる場所へ…。

着いたのは、街で一番大きな病院。
道中、楓は一言も話さなかった。
というよりも、話しかけられなかった。
何かに怯えているような、そんな印象にも見えた。
病院に着くなり、楓はさっきまで掴んでいた腕をパッと放ち、

「5階の個室に行きなさい。」
と一言だけ伝え、俺を見ている。
「楓は?」
楓の返答は無視というものであった。
さっと前を向き、院内に。
エレベーターで上がっている最中に、最後のメールを開いた。
知らないアドレスで、件名に"鈴木の親です"と記されていた。
「突然の連絡でごめんなさい。鈴木の母です。今日の夜、真穂は自ら命を終えようとしました。机の上には遺書という形で手紙を置き、本当に死ぬつもりだったようです。父、母ともになぜこんなことをしたのか分かりませんでしたが、遺書を勝手ながら見たところ、あなたの名前が何回も出てきたので連絡させていただきました。もし、お時間に余裕があるなら、病院に来ていただき真穂とお話してください。よろしくお願いします。」

一気に胸が苦しくなった。
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