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君と共に

第14章 終わりに近づくその日まで


涙目になりながら、夜を過ぎていく気持ちはなんとも言い表しがたい。
明日は必ず来る。ごくごく当然のこと。
それを覚醒したまま出来るだけ穏やかに過ごしてみようと試みるが、泣くという行動のエネルギーが思いの外に消費が激しかったようだ。

残ったエネルギーは頭の中で使用する。
初めて会った日。
一緒に遊んだ日。
一緒に泣いた日。
会いたいと願い続けた日々。
再開した日、時間、そして笑顔。
無色に近い自世界をこうも彩ってくれた楓は、ある意味生き甲斐と呼べる人だ。
昔も今も、これからも変わらない。
もし今、一緒に人生を終えることが許されるならば
後悔しないのかもしれない。

でも、それで楓が帰ってくることはない。
天国で会える、そんな事など普通あり得ないし分からない。
いつもみたいな冷静かつ沈着ならばまず考えることない妄想も、今は少し信じてみたくなるほど。
現実と向き合う怖さは月が沈むと反比例するように、上がってくる。
その怖さを打ち消すように、体は睡眠を欲しているようだ。
そして、徐々に瞼が降りようとしてる…。
そして、いよいよ夢の中へ飛び降りてしまった。

「一樹、一樹…。」
「楓?」
「私の事、覚えててね。」
「何言ってるんだよ!ずっと覚えてる!」
「一樹なら、そういってくれると思った…。」
「楓?そっちに言ってはだめだ!」
「ありがとう、大好きだったよ。」
「待てって!行くなって!楓!楓!」

息が荒い。マラソンの中間地点と錯覚するほどの呼吸で、目が覚めた。
「…夢か。」
夢でよかった、と思うと同時にまた睡魔が襲う。
抵抗の余地はなく、また布団の中で目を閉じた。
額が少し汗ばんでるのは、夢の中で楓を追いかけていた名残であろう。
それでも、少しずつ少しずつ時計の針は音を鳴らしながら、進む。

静寂した部屋。
時計の音とゆっくりとした呼吸音が少しハモりながら楽しんでいるときに、マナーモード特有の振動が横槍を入れた。
本人はまだ気付いていない。
その内容が、更に自分を苦しめることになる事を。
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