• テキストサイズ

君と共に

第13章 これまでとこれからと…


とりとめもない会話をしながらも、お互いに想っていることを確かめ合う二人。
家に招かれてから、どのくらいの時間が経ったのか解らないが、可能であるなら時止めの呪文を唱えたい。
そんな気持ちになるほどかけがえのない幸福の一時である。
「和樹、携帯鳴ってるよ?」
ズボンの右ポケットを指差す。
「…あ、鈴木からだ…。」
「出て上げて?」
楓は少し離れてそう言った。
「もしもし、片倉です。」
「かずくん、明日は学校に来る?宿題見せてほしいんだけど…。」
「あ、うん。わかった。行くよ。」
「ごめんね、ありがと!じゃあ、また明日ね。」
「うん、また明日。」
なんだ、ただの依頼か。なら、今掛けなくてもな…
「明日、学校行くんだー…。」
「まぁ、そうなっちゃったね。」
「私も行っていい?」
学校の生徒ではない楓が来るとなると、校則といった障壁に衝突する。
しかし、眼差しは冗談じゃない。
「来てもいいけど、誰にも見付からないようにしないと…。」
「大丈夫、和樹がいるから。」
そう言うと、頭を肩に乗せる。
こんな甘え方、ただただかわいくてずるい。
「わかった。じゃあ、来たら連絡ちょうだい?さすがに登校は一緒に出来ないと思うから…。」
頭をポンポンとぎこちない手つきで、触れる。
初めての動作なんだから、仕方ない。
そう言い聞かせながら、頭を撫でる。
「ありがと、和樹。」
そのまま目を閉じた恋人は、うっとりしながら時を楽しんでいた。

「楓、起きて?」
囁くように、優しく声かけをした。
「あ、もうこんな時間!もうすぐ帰ってくるのか…。もっと一緒にいたかったなー…。」
しょぼんとする彼女もまた、かわいらしく。
「また明日会えるから、ね?」
「…うん。そだよね。」
このセリフ、そう多くは言えないことなんてとうに理解しているが、言わざるを得なかった。
そうでもしないと、何もかも崩れてしまうから。
玄関まで見送ってくれる彼女は泣きそうで。
「楓、夜にまた連絡するね?」
「…うん。待ってる。」
「じゃあ、明日。」
「今日はありがとう、和樹。」
作り笑いの楓を背に扉を出た。
/ 47ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp