第3章 微かな変化
「なかなか取れないな、くそぉ。」
軽く1000円はつぎ込んでる。一回200円のこれが今や小銭吸収機に思えてきた。
「ちょっとずつは動いてるのに、なんで取れねぇんだよ。」
「一度、やらせてくれないか?」
「一樹、UFOキャッチャーやったことあるのか?」
「一度もない。」
試してみたくなったのだ。
できるできないは別として、挑戦したくなったのだ。
「…やってみてくれ。」
重心が少し右にずれている。
ここは持ち上げるのではなく、横から押してみればいいのではないか?
アームが開くのを利用し、押してみる…
「やってみる価値はありそうだな。」
ウィィィィン、ガチャン、ウィィィィン、ガチャン、ウゥゥゥ(下に下がる音)、ガガガガ…
ゴロッ、ボトンッ
取れた。驚くほどうまくいった。
「一樹、お前、プロになれ。」
「UFOキャッチャーのプロなど聞いたことない。」
「まぁ、お前には似合わねぇか。ありがとな。」
「あぁ、どういたしまして。」
あの白いアザラシを誰にあげるのかは気になったが、聞かないことにしておこう。