第3章 微かな変化
いつもと違う放課後になったのは、戸田からの一声だった。
「今からどっかいかねぇか?」
初めてのことに戸惑い。なぜか緊張。少し心臓がバクバクしてる。
「構わないよ。予定もないし。」
どうせ帰っても勉強しかしないからなぁ。少しの息抜きだな。
「どこに行くんだ?」「うーん…どっか。」
曖昧な表現になぜかひとかけらの冒険心が熱くなる。
このひとかけらに、素直に聖火を灯すとしよう。
戸田に誘われ、やってきたのはちかくのゲームセンター。
どっか、って言っときながら足は迷いなくその方向に向かっていたのは、行きたくて仕方がなかったのだろう。
久しぶりに来たような気がする。
小学生の高学年以来、だろうか。
「少し変わったな、ここ。」
「新しいゲームもちょっとは入ってるからな。基本は変わんねぇけどよ。」
懐かしさと新鮮さを同時に味わえるのもたまにはありだな。
「これこれ。これをやりにきたんだ。」
新しいUFOキャッチャー、か。
「この白いアザラシのクッションが欲しいんだよ。」
UFOキャッチャーの中に堂々と寝転がっているアザラシ。
白い体に長い髭、それに目つきが少し鋭い。
まるで、取れるものならとってみろ、と言わんばかりの態度。
「…で、俺を呼んだ理由は?」
大体は分かっていたが、一応聞いてみる。
「俺の全財産を使っても取れない場合、よろしくな。」
やっぱりか。
「仕方ないな。協力しよう。」
「さすが一樹だな。恩に着る。」