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君と共に

第11章 衝突、そして…


「あ、やっと来てくれた。」
そう声を掛けたのは楓だった。
「いきなり、どうしたの?」
この学校の生徒ではない楓がここにいることがすごく新鮮であった。そのせいか、少し緊張している。
「びっくりさせてごめんね、いきなり屋上にきてなんて言われたらその反応が当たり前だよね。」
なんだか、いつもと雰囲気が違う気がした。
元々、弱々しい雰囲気だったがそれがよりいっそう濃くなった感じを覚えた。
「和樹君、今から言うこと信じてくれる?」
「え、なに?」
深く息を吸い、心の中で構えた。
「私、あと3日すれば…死んじゃうんだ。」
…………………
何故だろう。驚くことができなかった。
初めて言われたはずなのに、聞いたことあるような錯覚に陥った。
楓にもそれは伝わったらしい。
「突然、こんなこと言うの昔と変わらないよね私。」
突然のお別れ宣告。まさにあの時と同じ。
「昔から体が弱かったの和樹君も知ってるよね。それに加えて色んな病気を持ってしまったんだ。医者からは治療しても効果がないってはっきりと言われて、緩和ケアって言うのに変えていこうってなったんだ。自分らしく最後を迎えてほしいって泣きながら言われちゃったら、何にも言えなかった。」
淡々と話す楓に何も言えない自分。
やっと会えたのは、楓が死を受け入れたため。
会えない時間と会える時間が完全に比例してない。
「…でも、なんで3日後ってわかるの?」
やっと出てきた言葉が疑問系なのは俺らしいのかな。
「それはね、私が決めたの。この3日間、一生懸命生きて後悔ないように過ごしてからいなくなるほうがいいって思った。いつまで生きれるか分かんないよりずっと楽だと思うしね…。」
強い意志とは裏腹に、その顔は今にも泣きそうに見えた。
「今日はそれを伝えに来たの…?」
また疑問系。馬鹿だな俺。
「さっきから聞いてばっかり。和樹君らしいね。」
楓が少し笑った。
何故かその笑顔が清く美しく見えた。
「今日呼んだのは、このことを伝えに来たのともう一つあるんだよ。」
え、なに?って聞こうとした自分をぐっと抑え込んで、黙って目を見た。
「片倉和樹、あなたに伝えたい、いや伝えなきゃならないことがあります。」
今までより真剣な眼差しにやや圧倒されながら、目線を外さず、言葉を待った。

「私はあなたが好きです。これからもずっと一緒にいてくれませんか?」
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