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君と共に

第5章 隣の邪魔者


突然の質問に、少しばかり時間を取られたが
俺はゆっくりと質問に答えた。
「人と話すのが好きじゃないから。」
ただ、そう答えた。100%の答え、とは言いきれないが。
「そっか、そうなんだ。」
昼間と変わりすぎるその態度に、俺は困惑しそうで。
しかし、その顔は寂しさを少し隠したような顔で。
「それだけなの?」「それだけだよ。」
そんなこと、いきなり聞いてきてどうしたいんだ?
違う意味で、話すのが嫌になりそうだ。
「人と離れる辛さ、よく知ってるんだね。」
………
何も言わなかった。正確に言えば、言えなかった。
一瞬にして、心に突き刺さった言の葉の刃。
するどく、そして深く奥にまで貫通しそうな感覚。
人と離れる辛さ、それが今の俺を形成しているのだ…。

小さい頃の記憶。そう、あの別れの記憶。
あの時に味わった痛みが、苦しみが、悲しみが
人との繋がりを断ち切ろうとする。
距離が近いほど別れたときに遠く感じる。
一緒にいる時間に比例して、居ないときの寂しさも大きくなる。
思えば思うほど、涙を流す。
傍に居たいと願うほど、孤独感を味わう。
それなら、いっそ…
独りでいれば、傷つくことも苦しむこともない。
そうして、これまで自分自身を守ってきたのだから。

「おまえには、わかんないよ。俺の心が。」
足を一歩、また前に向けて進む。
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