第8章 軍隊狸ーゴールデンカムイ、月島ー
「奉天会戦の、あの一戦の、君の一夜の話を、是非にも聞いてみたいんだがねえ……。月島くぅーん?」
月島は体を心持ち斜めに反らして距離をとってから、横目で鶴見中尉を見やった。
この手に負えない変わり者の怪傑は月島が選んだ道行きの案内人だ。そう決めたからには彼のやらかす事は月島の責任ともなる。
月島はそういう男だ。
鶴見中尉が言うのならば物笑いの種になるのも仕方ない。彼の下で何度も繰り返した、またこの流れだ。
諦める。そして気を取り直す。それが筋合いだ。自ら臨んだ道に是非は無い。
月島はそういう男だ。
諦観した不遇の軍人が、溜め息を吐いて語り出した。