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すうら、すうすう。

第7章 聖夜のシリング硬貨ーシャーロック・ホームズー



「さあ、皆さん。座って朝の恵みに預かりましょう。昼には教会でクリスマスの礼拝の後、村のおかみさんたちの御馳走が出ますから程々に。うちのクリスマスの聖餐は彼女たちのお陰で結構なものですよ。食べずに帰るなんて、絶対にお勧めしません」

ピーターソン牧師に促されて、私たちはテーブルに寄せた木作りのベンチに腰掛けた。自身もクッションのないストゥールに座りながら、牧師はアイリーンとカーディに笑顔で頷いて見せる。

「勿論アイリーンのスープもカーディのポリッジもなかなかのものだ。しかしここは我慢のしどころだよ。お腹が膨れすぎてクリスマスプディングを食べ損ねては、悔しくて年も越せないからね」

アイリーンとカーディはぴかぴかした顔を輝かせ、シリンダ硬貨を大層大切そうに握り締めてはにかみ、牧師が席についたのを見計らってそのスープとポリッジを配膳してくれた。温かい湯気は湿って美味しそうな匂いで鼻をくすぐり、夜通し呑んで疲れた胃が熱いスープとポリッジを欲しがってぐうと呻き声を上げる。

「ハッピークリスマス」

牧師の音頭と水の乾杯で始まった朝食は、私の疑問を置き去りに忌憚なく、また大変和やかなものになった。
何しろホームズは一向に皮肉じみた事を口走らなかったし、レストレード警部などは一度、姉弟に向けて笑いかけさえしたのだから、如何に平和な食卓であった事かお解り頂けると思う。















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