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すうら、すうすう。

第7章 聖夜のシリング硬貨ーシャーロック・ホームズー


レストレード警部と目が合った。
生真面目一方の男の口元に浮かんだ微かな笑みとぎゅっと寄せられた眉根に、彼の困惑が見て取れる。レストレード警部は、咳払いしてぎこちなく言った。

「硬貨を数えて下さい、博士。この人が一度やり出したら引き下がる事などあろう筈もないのはあなたもご存知でしょう?」

成る程、その通りだ。
私は粛々と硬貨を十八枚数え、ホームズとピーターソン牧師、そしてレストレード警部を見渡した。

「十八枚ですな」

「よし。では東方の三賢者には頭数が飛び出ているが、幼子たちの元へクリスマスの祝いをしに行こうじゃないか」

今までの入念さをまるで失念したような無造作な様で革袋に小袋の中身を空けて、ホームズは手を擦り合わせた。

「ベツレヘム程遠方を訪れる訳ではありませんが」

空いた小袋に隠しから出したクリスマスキャンディーを詰めながら、ピーターソン牧師が笑った。

「それでもあの子たちは喜んで迎えてくれますよ」

「だといいですがね」

鹿爪らしく言うレストレード警部をホームズがチラリと一瞥して肩を竦めた。

「最善の友が必ずしも最善の人物に映るとは限らない」

「皮肉ですな」

「職業柄私はそうある事を厭わないがね。君もそうじゃないか、レストレードくん」

鷹揚に言い切ったホームズに、レストレード警部は首を振った。

「私は私の職務に常に誠実ではありますが、殊更嫌われる事を望んではいません。報われない仕事に身を捧げるのは愉快ではない。あなたと一緒にしないで頂きたいですな」

「成る程。聞いたかい、ワトソンくん。君はどう思う?」

ホームズに問われて私は髭を撫で付けた。

「ふむ。君たちが嫌われるのも頼りにされるのも双方然りで、それは所謂職種に伴う弊害というか…役得というか、立場を別にする僕から明言出来るものではないが、傍から見るに苦労が多くとも決して報われないばかりではないように思うがね」

これを聞いたレストレード警部は妙な顔で口角を下げ、ホームズは笑い出し、ピーターソン牧師が微笑みながら、私たち三人を見巡った。

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