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すうら、すうすう。

第7章 聖夜のシリング硬貨ーシャーロック・ホームズー



クリスマスの朝は心躍るものだ。大人であっても、子供であっても。
それはそこに窺い知れない数多の思いやりが交錯するからなのだろう。神の慮りだけではなく、人の内に宿る何か。この日ばかりは誰もがサンタクロース、情け深い聖ニコラオスに成り得る。偏屈や天邪鬼、真面目一辺倒の人間の心をすら動かす不思議な動機を持ったクリスマスは、一年で最も容易に奇跡が起きる日のように思う。


降り続く雪は終始衰えなかったが、曇天の雲は薄らぎ、未明の陽光の中天気雪が降る不可思議に神々しいクリスマスの朝が明けた。
夜通し見張り続けた姉弟の家のドアが開き、カーディが跳ねるように雪を掻き出した頃合いに、二人の細やかな家屋の煙突から細い煙が立ち昇り、アイリーンが朝の支度をし始めたのが窺えた。
姉弟のクリスマスは常変わらぬ弛みない日々の務めから始まるようだ。

「そろそろクリスマスの挨拶といこうか、ワトソンくん」

パイプの灰を始末して、ホームズが立ち上がった。凍りついた窓の隅を慎重に叩いて明け、表の空気を入れる。暖炉の熱と薪の匂いで燻った小屋にサッと爽快な雪片絡みの風が吹き込んだ。
窓を開けた拍子に床に落ちた雪の塊を、如何にも考え事をしている最中の彼らしい様子で無頓着に踏み散らし、また向かいに腰掛けて口を開きかけたホームズに私は寝不足の目を瞬きながら先手を打った。

「その前にこれを数えるんだろう?ずっと私の側にあったものを、何でそう用心深く確認するんだい。君も僕も夜通し起きていたんだ。誰が盗む暇もないだろうに」

「そう。誰も盗めない。その通りだ、ワトソンくん、だからこそ確認したいんだ」

ホームズはひどく考え深い顔付きで私の手元を見詰めた。僅かに寄せられた眉が苛立ちを、やけに光る眼が好奇を表している。
一体何がこうもホームズを駆り立てているのか、何れにせよ、どうやら私のゴーストに対する疑惑はホームズの数年来の探究心を満たす格好の言い訳になったらしい。私以上に熱心なホームズの様子に私は引き込まれた。

「これは犯罪絡みではないと君は言っていたが」

「ああ、確かにこの件は切欠こそ浅ましい犯罪絡みだったけれど、今は完全に犯罪とは関わりないと僕は信じている」

窓表の景色に目を細め、ホームズは上着の隠しに手を突っ込んだ。

「わからない。だから追求せずにいられないんだ。僕の悪い癖だね」
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