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すうら、すうすう。

第7章 聖夜のシリング硬貨ーシャーロック・ホームズー



「この袋の中にはピーターソン牧師を含めた村人たちの、幼い姉弟への心尽くしが詰まっている」

成る程、すっかり腑に落ちた。
これは村人とピーターソン牧師から、あの姉弟へのクリスマスプレゼントなのだ。
微笑ましい贈り物の如何にも温かみのある赤い縫い目を器用な指先でなぞってから、ホームズは緑の飾り紐を解いた。そうして私の手の上に硬貨をざらざらとあけた。丹念に袋を何度も振り、空の中身を見せてよこす様が馬車でのやり取りを思い出させる。

「何枚あるか、数えてみてご覧よ」

言われるままに硬貨を一枚一枚袋に戻しながら数え上げると、確かに十八枚のシリング硬貨があった。

「十六戸の家と一戸の飼料雑貨店、そして教会からの十八枚だ。マクドナルド姉弟の一戸を除いた、これがこの小さな村の全部なんだよ」

「そしてそこに君の一枚が加わる訳だね」

「いや、僕のこのシリング硬貨の行き先は、今のところあの二人ではない」

丁寧に飾り紐を結び直して、ホームズは贈り物の袋をピーターソン牧師に渡した。牧師はそのお宝を慎重な手付きで箱に収め、鍵をかけると説教台の下へ戻す。

「では参りましょうか」

牧師に促されて表へ出、こじんまりとした若夫婦の墓前で黙祷した後、ホームズはまた奇妙な真似をした。
つまり、自分のシリング硬貨を彼らの墓石の上に供えたのだ。
私は思わず眉をしかめた。

「何の真似だい、ホームズ」

そんな事をするくらいなら先程の袋に詰めてやった方がどれだけいいか知れない。故人に硬貨は必要あるまい。

「馬鹿らしいと思うかも知れないが、これは僕にとって…いや、僕ともう一人の人間にとって、非常に意義深い事なんだ」

私の非難がましい視線など一向に頓着なく、ホームズは非常に真剣な表情を浮かべて墓前のシリング硬貨を眺めた。

「今年もお預かりしていますよ」

私たちの後ろに控えていたピーターソン牧師がホームズに何かを渡した。

「そうでしょう。彼はそういう人間です」

意味有りげなやり取りの後、ホームズは面白そうに手の中のものを見つめ、それも墓前に捧げた。
何かと思って覗き込んだ私は当惑した。

またもやシリング硬貨だ。

「そんな顔をするもんじゃないよ、ワトソンくん。墓地で人を笑わせるのはあまりいい趣味とは言えない」
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