第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
でもルーナはそれどころじゃない。
カケジク・・・!三日ぶりのアタシのタリスマン!元気だった?アタシは寂しかった。またアンタに会えて嬉しい!
ルーピン先生は苦笑いしながらカケジクを取り上げて、ストンと引き出しを閉めた。引き出しを呑み込んだテーブルは、すっかり粗末な顔つきで隠した秘密には知らんぷり、本当にただのテーブルに見える。
「さあ、これが君たちの言っていたカケジクだ」
トン、と長い指でカケジクを突いて、ルーピン先生は考え込むようにそれをテーブルに置いた。
膝掛けに埋まったポットを持ち上げ、空のカップを湯気の立つ紅茶で満たす。
「ハーマイオニーは自分なりに仮説を立てて私のところに来たんだ。随分色々調べたようだよ。あんなに沢山授業を掛け持って、山のような課題をこなしながら調べものをするなんて、ハーマイオニーは超人的な・・・」
言いかけたルーピン先生はフと変な顔をして、何か思い当たったように笑った。
「そう、"いずれにしても"凄い事だ。ハーマイオニー・グレンジャーは研究者向けの努力の才能と精力的な知識欲を持っているようだね」
ルーナは双子と交互に顔を見合わせた。
それってつまり、どういう事?
「しかしだからと言って物事の真理に必ずしも辿り着けるというものでもないのが研究の難しさだ。ハーマイオニーはこのカケジクをコックリサンだと言っていた」
?それってだから、どういう事?
妙な顔をするルーナと双子に、ルーピン先生は壁を埋め尽くした本棚から一冊の本を抜き出して見せた。
図書館の匂いがする古い本。カケジクの絵みたいな素っ気ない挿し絵と、綺麗な流線とちっちゃな家みたいな字がぎっしり並んでる。
ニホンの本かな?こんな字、どうやって読むんだろ。不思議・・・
「コックリサンというのはあまり上等じゃないキツネやイヌの霊が降りるというニホンのテーブル・ターニングだ。これが一時ニホンで凄く流行って様子がおかしくなる子供が続出した事がある」
紅茶を啜りながら頁を繰り続ける。
「それがコックリサンの仕業だって話?」
ジョージの問いに先生はやんわり首を振った。
「いや、子供特有の感じ易さが自己暗示や集団ヒステリーと重なったんだと思う。あまりいいものではないとコックリさんは禁じられる事が多いようだが、そこに根拠はない」