第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
「さっきハーマイオニー・グレンジャーが来た。君の事を心配していたよ」
何て答えていいかわからずに、ルーナは黙って頷いた。先生はまたフッと笑うと、よれよれの上着のポケットに手を突っ込んだ。
「カケジクの事も」
「ハーマイオニーは何て言ってあのコを持ってきたんですか?」
双子の言ったみたいな頭の使い方なんて、今のルーナには出来そうもなかった。でも正直に言ったら、気が軽くなった。
「あれは君のお守りなんだって?」
ルーナの問いにこたえず、ルーピン先生は逆に聞いてきた。ルーナはまた頷いた。
「良ければ少し話そうか、ルーナ。お茶を淹れよう」
一瞬迷ってからルーナはきびすを返したルーピン先生の後に続いた。
先生が開けてくれたドアから中に入る。
「お客を迎える準備はなくてね。悪いが散らかっているよ。さあ座って」
奥の椅子をルーナに勧めて先生は慣れた手つきでお茶を淹れ始めた。よくわからないものこそ沢山あるけど、全然散らかってなんかいない部屋の中に双子の姿はない。でも、何処かで息を潜めてる筈。
カケジクは?
慎重に辺りへ視線を巡らせたルーナは見当たらないタリスマンに焦れた。
もしかしてもう双子が持って行った?まさか。でもわからない。何しろあの二人はウィーズリーの双子なんだから。
「さて」
ルーピン先生の傷だらけだけど指の長い器用そうな手が、目の前に紅茶のカップを三つ置いた。
ルーナが並んだカップをじっと見つめるのに微笑んで、先生はドアに歩み寄った。
「今期の私の仕事は闇の魔術に対する防衛術の教師だ。部屋にはそれなりに危険なものもある」
ポケットから取り出した小さな鍵でカチリと部屋に錠をかけて、にやっと笑う。草臥れた顔に悪戯っぽい明るい表情が浮かんだ。
「これで逃げ場はなしだ。出てきなさい。妙なものに触って半魚人になったり髪が全部抜け落ちたりしたら悪戯どころじゃないだろう、ウィーズリー?」
頭の後ろに目でもついてんの?
ルーナは感心して、大きな水槽の陰から現れた双子に椅子を準備してやっているルーピン先生を見た。
先生って凄いんだ。皆が皆そうなのかどうかはまだ二年生のアタシにはわかんないけど・・・
「ルーナにカケジクを返して下さい」
ジョージがしかめ面でルーナの左に立った。
「あれはルーナのものなんだ」