第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
アタシは何でこんなに怒ってるのかな?
走りながらルーナは考えた。
パパの事でからかわれたりヤな言われ方するのはいつもの話。そりゃパパを悪く言われるのは厭だけど、いつもはこんなに怒ったりしない。
アタシ、絵から出てきてくれるお守りが嬉しかったんだな。だからロンとネビルに見せびらかせたり、ハーマイオニーや双子相手に意地になったり、アタシらしくない事しちゃったんだ。
アタシが一番のバカだ。
双子もハーマイオニーもロンも悪くない。皆当たり前の反応しただけ。考えたらすぐわかる皆らしい事しただけなんだ。
らしくなかったのはアタシ。そのせいでごちゃごちゃになっちゃった。
誰かに言ったら笑われるかも知れないけど、アタシ、あのコと友達になりたかったんだ。夜独りきりで眠れないとき、黙ってじっとベッドの天涯を眺めるんじゃなく、絵から抜け出たあのコとお喋りしたかった。
アタシは独りぼっちなんか平気。だけど、独りで居たくないときだってあるし、誰かに今アタシが何を考えてるか、わかって欲しいなって、そう思う事もあるの。
ハーマイオニーがルーピン先生の部屋から出て来た。草臥れてて、でも優しそうなルーピン先生が彼女を見送りに顔を出す。
ハーマイオニーは何だか不思議な顔をしていた。痛いような、迷ってるような、でも一生懸命で真っ直ぐなハーマイオニー・グレンジャーらしい顔。
そんなに親しくもないアタシに、らしい顔、なんて思われるハーマイオニーって、すンごい正直な人なんじゃない?
コツンと誰かの投げた小石が頭に当たった気がした。
そんな人に無理を押し付けて腹を立てるなんて、バカじゃないの、ルーナ!
思わずハーマイオニーに声をかけようとしたルーナを、フレッドとジョージが廊下の角に引っ張ってシッと止めた。
「ハーマイオニーはハリーとロンに任せろって」
「今話しかけてもまた喧嘩になるだけだろ」
ならないよ。違う。アタシはハーマイオニーに謝りたいの。・・・ヤな事させてごめんねって。
「まあさっきの様子じゃロンやハリーとも揉めるだろうけど」
「何日かすりゃケロリだ」
「そういうモンだろ?」
「そういうモンだぜ?」
そういうモンなの?
アタシには友達がいないからわかんないや。
「バカ言えよ」
「わかってないだけだろ」