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すうら、すうすう。

第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ


クスンと土と木と草の匂いがした。
ツンと爽やかで香ばしくて、皆合わさると少し木の実の匂いにも似てる気がするけど、やっぱり土と木と草の匂い。清潔な・・・清潔?何か違う。何だろう。不思議に甘い花の匂いがちょっと混じってる。兎に角絶対悪くない匂い。

森の匂い?ううん、そんな温かくて平らかな匂いじゃない。もっと深くて寂しい感じの・・・・これ、これって・・・・

「山の匂いがする」

雑談の最中にいたハリーが、不意にポツリと呟いた。

ああ、そうだ。

ルーナはカケジクを見下ろした。顔が見えないまんまの絵の主をじっと見詰める。

アンタ、山のコなんだね?

袖口から首元やお腹にヒヤヒヤ吹き込んでいた風が止んだ。

「・・・本物だな」

ジョージが、小さな掠れ声を出した。ルーナとフレッドにしか聞こえない小さな声。

「ホントにハーマイオニーに預けるのか?返って来ないかも知れないんだぞ?」

今までのふざけた感じとは違う、真面目なフレッドの声。

「・・・うん。大丈夫。アタシますますこのコの事が知りたくなった。だから、ハーマイオニーがこのコを何処へやっても、必ず取り戻すよ」

そう思ったんだ。本当に。







翌日、ルーナは自分から不思議な匂いが立ち上がるのを感じた。
袖口から潜り込んで来た人懐こいあの風の移り香だ。廊下でスネイプ先生とすれ違ったとき、先生と一緒に歩いていた黒髪の綺麗な女の人がフと呟いた。

「梅の匂い・・・?」

「どうした?」

スネイプ先生の声がする。ルーナはヒャッと肩をすくめて振り返りたいのを我慢した。スネイプ先生はルーナをあまり好きじゃないらしいから。

「今、梅の匂いがしました」

訝るような懐かしむような声がスネイプ先生に答える。

「ウメ?あのコンポートしたアプリコットに似た実の事か。あれはもっと酸味の強い香りだったと思ったが」

「フフ、それは梅干しですよ、セブルス。今香ったのはその実の花、梅香です」

「バイカ?」

「梅は日本の花だからあなたには馴染みがないかも・・・今度何とかして見せてあげたいな」

双子の言ってたニホン人の先生だ!

思わず振り返ると、二人は廊下の角に消えるところだった。

甘い匂いはウメの匂い・・・・

スンと鼻を鳴らしてルーナは顔をしかめた。
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