第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
意外な事に、ハーマイオニーは素直にー鼻に皺はよっていたけれどー頷いた。
「大事なものを色々言われるのは厭だと思うわ。でもルーナ、もしそれがおかしなものであなたに何かあったりしたら、あなたの大事なお父さんが悲しむわよ?それにもしカケジクのせいで他に迷惑がかかったらどうするの。あなたじゃ手に負えないかも知れないのよ?皆が困って、あなたも傷ついちゃうわ」
「うへぇ、ハーマイオニーがまともな事言ってる」
ロンの台詞にハーマイオニーの眉がまた跳ね上がる。
「私はいつだってまともです!何てこと言うの、ロン!」
ロンが何を言いたいか、わかる。正しい事、じゃなくて、まともな事って意味。
ハーマイオニーは私を心配して言ってくれてる。規則を破るのが悪いとか、危ないものは駄目だとか言う前に。
これって凄くまとも。
カチコチの優等生だと思ってけど、ちょっと違うな。アタシが先に謝ったから?何だか、うーん、ハーマイオニーって、鏡みたい。
相手が怒鳴ったら怒鳴り返すし、謝ったら自分も悪かったって認めるし。
本当はとっても素直で"まとも"なんじゃないかな、もしかして。石頭なんて言って、凄く悪い事しちゃった。
だからって、カケジクは返してくれそうにないけど・・・
「ちょっと触っていい?」
ルーナがカケジクを名残惜しそうに見ながら言うと、ハーマイオニーはキロッと迷うように目を泳がせてから、渋々頷いた。
「いいわよ、勿論。これはあなたのカケジクなんだから」
うん。そうなんだけど・・・・
ルーナはざらついた紙にそっと手を置いて目を閉じた。
ゴメンね。アタシが変な意地張ったりむきになったりしたから、変な事になっちゃった。誰にも見せないで、大事にしまっておけば良かったね。
ローブの袖口がフワッと動いた。
「・・・え?」
ビックリして声が出た、と思ったんだけど、これ、アタシの声じゃない。
ふたつの音が重なってるし、第一アタシは声を出してない。
サッと視線を巡らせると、フレッドとジョージがルーナの袖口へ熟れて落っこちそうなリンゴみたいに大きな目を向けている。
他の皆は気付いてない。呑気に狐狩りの話なんかしてる。同級生同士の気楽な軽口。それに退屈を覚えた双子だけが異変に気付いた。