第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
「・・・万が一あれが変なものだって事になったら、ハーマイオニーは退かないと思うよ。絶対誰か先生のとこに言いに行く。そしたら君のタリスマンは取り上げられちゃうんだ。いいの、それで」
「・・・・・・・」
ルーナは難しい顔でポリッジを掻き回した。
考え事しながら取り分けたせいで、ルーナの前には食べかけの料理が取り留めなく散らかっている。
マーマレードのトースト、ベーコンに半熟卵、燻製ニシン、ポリッジ、ミルク、コックス・オレンジ・ピピン。
こんなに食べきれない。失敗しちゃった。残したら屋敷しもべに悪いな・・・・
憂鬱な気分でポリッジを押しやった先で、今あまり見たくない顔がふたつ、にっこりした。
「朝から食欲旺盛で何より。おはよう、レイディ・ラブグット。こんだけ平らげりゃ屋敷しもべが大喜びするぜ」
「昨日の渋い顔からしてカケジク諸共雲隠れでもするかと心配してたが、その分なら逃避行はなしだな。大変結構な事ですよ、姫」
「普通に話しなよ。何でいっつもフザケてないと気がすまないの?変なの」
ミルクをチビチビ呑みながら、ルーナはうんざりした。
「朝から聞きたくない。その喋り方。それにね、アタシはルーナだよ。レイディとか姫とか下んない呼び方は止めて。今度やったらカケジクをスネイプ先生のとこに持ってくよ?」
「おいおい正気かよ、ルーナ。そんな事したら君の大事なカケジクはもう戻って来ないぜ?パパから貰った大事なお守りなんだろ」
トーストに掻き卵をたっぷりのせて齧りながらフレッドが笑った。
「スネイプのとこに持ってくくらいなら僕らにくれよ、あれ。絵の住人とお近づきになりたいんだ」
ブラッドソーセージとマッシュポテトを皿に取り分けてジョージも笑った。含みのある笑い方。
あのコに悪戯の手伝いさせる気なんだ。・・・何するつもりだろ・・・
トーストの最後のひと口を呑み込んで、ルーナは立ち上がった。
「ハーマイオニー」
隣のテーブルで本を広げながら紅茶を呑んでいたハーマイオニーが顔を上げる。ついでに隣にいたロンとハリーもこっちを見た。
「後で聞きたい事があるんだ。今日の夜、空いてる?」
ハーマイオニーは紅茶片手に目を瞬かせてルーナを見返す。
「えーと・・・・・おはよう、ルーナ。・・・・聞きたい事?」
「うん。いいかな?」