第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
またパパをペテン師呼ばわりされると身構えていたのに、双子はむしろロンよりカケジクのスピリットを信じ込んでいるみたいだった。
同じ顔を揃ってアタシに向けて、双子はいかにも真面目そうに説得してきた。
「だって言うだろ?東洋の神秘ってさ。ニホンには何百万もゴッドがいるって聞いた事がある。そんな国から来たものなら、不思議が本当だっておかしかない。大体僕らの寮からして額に収まったゴーストに護られてるのを忘れたか、ラブグット嬢?」
「まあ、そういう訳で、カケジクにスピリットが入っているとしてだ。それが善いものか悪いものかわからないというのは頂けない。これは問題だぞ、レイディ・ラブグット?寮におかしなものを持ち込むのはマズイ」
「本の虫のハーマイオニーならソイツが何かわかるかも知れないだろ?ついてってやるから彼女に見せてみようぜ、そのカケジク」
調子いい事言ってるけど、お腹の中は悪戯でいっぱいなんだろうな。このコが何でも貸してなんかやんないからね。
あんまり気は進まなかったけど、次にロンにこう言われてアタシの気持ちは決まった。
「いくらスピリットだって言ったって狐だろ?絵から抜け出して来たって狩られて終わりさ。何せここは狐狩りのイギリスなんだから」
パパのくれた魔を祓うスピリットだよ?そんなヤワなモンじゃない。バカにしないで。その気になったらきっと狼にだって負けないんだから。
わかった。ハーマイオニーでも誰でもいい、見て貰おうよ。ものの分かった人ならこのカケジクがすっごいタリスマンだってわかる筈だもん。・・・・ハーマイオニーがそんなにものがわかってるかどうかは怪しいけど。でも少なくともハーマイオニーは馬鹿じゃない。わかってくれるんじゃないかな。
「ルーナ、あれはお父さんに貰った大事なものなんだろ。正体なんか何でも構わないんじゃない?悪いものでもないと思うし、大事にしまっておいたら?フレッドとジョージにのせられない方がいいと思うよ」
茹で卵の頭を景気悪くスプーンでコツコツいわせながら、ネビルが気遣わしげに言う。ルーナはフッと物思いから覚めて、取り落としかけていたフォークを握り直した。
「アタシ、のせられてなんかいないよ」
ムスッと答えると、カリカリのベーコンを半熟卵の黄身につけて口に突っ込む。
「アタシもあのコが何か知りたいだけ」