第3章 絵から吹く風ーハリー・ポッター、ルーナ
「やれやれ、我らが自慢の弟は蚊帳の外か。余程深遠な話題と見える。何せうちのロニー坊やはジャック・オ・ランタン並みの空っぽ頭だからな」
「おいジョージ、それは言い過ぎだ。せいぜいガイ・フォークスのスケアークローだ。いくらロニー坊やの頭だって、空っぽって事はないからな」
「・・・僕の頭には麦藁が詰まってるって言いたいのか?あっち行けよ、フレッド、ジョージ。面白い事なんか何にもないぞ」
自分の腰かけた椅子の右と左に肘をかけて、左右対称に陣取った双子の兄弟にロンがムッツリと言った。
「ロニー坊やはお友達に置いてけ堀を食らってご機嫌斜めらしいぞ、フレッド」
「ポケットのおやつを分けてやれよ、ジョージ。発熱ヌガーか、ゲーゲートローチか?バタースコッチ味の新作もあるな。食って三分しないうちに目が飛び出して声が出なくなる優れ物、瀕死リコリス」
「リコリスがバタースコッチ味?最悪」
顔をしかめたロンに双子は揃ってニヤリと頷いた。
「その通り。味わうだけで瀕死状態」
「呑み込めば更に効果てき面」
「退屈な授業、厭な先生、ムカつく寮生」
「皆おさらばでうちに帰れる長期効果」
「ただし、具合もマジでずっと悪い」
「悪い事に、病院に行っても治らない」
ロンが呆れ顔をした。
「そんなの売れないと思うけど?」
フレッドが肩をすくめた。
「わかってないな、ロニー坊や。失敗なくして成功なし」
ジョージが腕を組む。
「好奇心なくして悪戯なし。そのけったいな絵は何だ?見たとこ東洋のものみたいだけど?」
ルーナはそうだよ、と頷いて、フレッドとジョージをまじまじと見た。この二人が話しかけて来るなんて珍しいな。
多分、余程この絵に興味があるんだろう。悪い気はしなかったけれども、あんまり詳しい話をする気にもなれなかった。
またパパの事をバカにされるんじゃないかと思うと、気が重くなる。
双子はそんなルーナの様子に頓着なく、ネビルを押し退けてカケジクに見入った。
「狐?いや犬?思わせ振りだな」
ロンと同じこと言ってる。犬じゃないのに。
「キモノを着てる。ニホンの絵か?」
当たり。でも教えたげない。
「スネイプのとこにニホン人の先生がいたよな?あの人なら何だかわかるんじゃないか。ホラ、これに宿ってるスピリットがどんなもんかとかさ」