第10章 オバケなんてねえよ。居たら困んだよ。ー銀魂、真選組ー
「頼んだ飯は置いてきやがれ、バイトくプ…ッ」
足を組んで顎をしゃくった沖田が土方の拳骨を食らう。
「この夜中に何フラフラしてやがる!とっとと帰って働くか寝るかしろ、バカッ!」
鬼の形相で怒鳴りつけた土方に、近藤が小刻みに頷いた。
「いやー、トシが心細がってんじゃねえかと思ったらもう気になっちゃって気になっちゃって、寝るに寝れなくなっちまってよ。まぁ腹も減ったし丁度いいみたいな?」
「鬼の副長がファミレスで肉焼いて芋揚げて皿洗ってンだと思ったら気になっちゃって気になっちゃって、笑いに来ずにゃいられねぇ。腹ァ減ってるし一石二鳥ってやつでさぁ」
無表情に言った沖田が投げ付けた空のグラスをパシと受け止めて、土方は額に青筋を浮かべた。
「要するに腹減って暇つぶしに来やがったって事だろ。帰れ。帰って寝ろ。でなきゃ代われ。俺が帰る」
「帰るよ、帰る。飯食ったら帰るからさ。そう怒んなよトシ。山崎があんまり心配するから気になっちまって」
椅子に座り直してナイフとフォークを手に取った近藤の言葉に土方の眉がピクリと上がった。
「ザキん奴ァ正気に戻ったのか」
「お前が代わりに出勤して安心したらしいぞ。アイツがあんなになるなんて余程の事だ。大丈夫か、トシ?」
「…何が?」
「だからオバ…」
「…いねぇよ。そんなんいねぇんだよ。絶対、い·ね·え」
「ははは。ビビって小便垂れねぇで下せぇよ。保健所に連絡しやすぜ、土方バイト」
「さっきっから何なんだその土方バイトってのは。語呂悪ィぞ。耳障りだ」
「土方副長がバイトんなったら土方バイトじゃねぇですか。理に適ってるでしょうよ」
「おめぇの理は世の中の理に背中を向けっ放しだ。いい加減気付け、沖田サディスト」
「ンなモンこちとらとっくのとうにご存知でさぁ。いちいちうるせぇな土方マヨネーズ」
「おいおい喧嘩は止せ。他のお客さんに迷惑だ」
「他に客なんかいねぇだろが。周りを見てみろ近藤さん。皆家で寝てんだよ」
「いやいやいや、トシ、世の中目に見える事が全てじゃねぇぞ?一見ガラガラのここだって、もしかしたら目に見えねぇお客さんで満席…」