第10章 オバケなんてねえよ。居たら困んだよ。ー銀魂、真選組ー
…何時までオーダーとってやがんだ、あの天パ猿。
足を止めてそれとなく銀時を待つ。
待っている自分に気付いて煙草を呑み込みそうになった。
「いやいやいやいやいやいやいやいや!待ってねぇ!待ってねぇぞ!こらアレだ、ちょっと考え事の妖精に囁きかけられちゃっただけだ。もしかしてコレってアレが出ちゃう感じのソレな雰囲気じゃないのとか…って何がアレでどれがソレだよ!余計な事囁いてんじゃねえ!!フェアリーのテイルをぶった斬るぞこの妖精ちゃんン!!!っだ…ッ」
「…何やってんの、バイトくん」
土方の頭をはたいたメニュー表でトントン肩を叩いた銀時が、何の気なしに冷凍庫をガゴンと閉めた。
「アイスの摘み食いでもしよってのか?アメリカ生まれでアメリカ育ちの凄くアメリカらしいダメ餓鬼みてぇな真似してんじゃねぇぞ。アメリカ気取んなら自由の女神かグランドキャニオンにしとけ。導火線がぶっ千切れて直接点火しか受け付けねえダイナマイトみてぇな同盟国を刺激すんなっつの。今の時代国際情勢に目端が利かねぇのは命取りだぞ、国家公務員。税金で暮らしてるおめぇらが税金払ってる俺らを危険に晒すようなアメリカンジョークかますとかマジアメリカンジョークだわ。ha-ha-ha」
「変な笑い方は止めろ。気持ち悪ィ。自由の女神は兎も角グランドキャニオンなんかどうやって気取んだよ?大体おめぇじゃあるまいし、俺ァアイスの盗み食いなんか…」
「やるときゃひと声かけなさいよ。幾ら心の広い店長代理でも抜け駆けは許さねぇからね?」
「しねぇっつってんだよ。オーダーは?」
「ああ。ハイこれよろしく。俺ァブレイク入るから出来たらサロン外してお運びしてね」
「は!?俺は裏方だぞ!?客席にゃ顔出ししねぇ約束…」
「仕方ねぇだろ。ご指名なんだからよ」
「指名?」
「もうちょっとちゃんと働かないと、その内ロウソクデモされるぞ、おめぇらは」
「……」
厭な予感がした。
当たった。
「いよーう、トシ。ご苦労さーん!万屋が店長代理だって?びっくりだな、オイ。ははははは」
「お仕着せの制服がクソ程似合ってやすぜ。土方バイト」
近藤と沖田を見止めた土方は眉間にビシッと皺を寄せた。
「帰れ」
「いやいやいやいや、ちょっと待てトシ」
踵を返した土方に近藤が腰を上げた。
