第2章 一緒に走ってたっけよ? ~ハイキュー!!白鳥沢
「・・・・・今度やったら退部だな・・・」
「牛島さんン!?」
「まぁまぁ。怖かったんだよね~、若利くん?一番に逃げ出したモンねえ。俺を人身御供にしてくれちゃって、ホントお茶目だよ、若利くんは。そのうち今日のお礼をするからね?覚えててよ?」
「いや、多分寝て起きたら忘れる」
「・・・・清々しいねえ、若利くん・・・」
「何の話をしてるんだ、お前らは?」
山形が呆れ顔で五人を見回す。
「何が怖かったって?楽しそうに走ってたじゃないか」
「・・・・そう見えたのか。お前の目は節穴以下だな。トイレットペーパーの芯だ。そんな目は盲腸より使えないから摘出した方がいい。摘出して目玉の親父にしちまえ。部活には連れて来るなよ?監督にブッ飛ばされるぞ?あと俺の腹が捩れる」
「・・・珍しい喧嘩の売り方するじゃねえか、大平。喧嘩なら買うけど何か変だぞ?らしくねえ。廊下でコケて頭でも打ったか?」
「黙れ鬼太郎」
「・・・イラッと来んな、何だ、その裏声」
「ちょっとちょっと、何で喧嘩になんの?止めろって」
瀬見が慌てて大平と山形の間に割って入った。しかめ面で五人を見、校舎の方をチラッと振り返る。
「そんな事より、置いて来てよかったのか、あのコ」
「あのコ?」
聞き返す五色に山形が忌々しげな顔をした。
「惚けてンじゃねえぞ。ずっとお前の制服の袖掴まえてたあのコだよ?一緒に走ってたじゃねえか。お菓子の彼女か?生意気な」
「・・・何言ってんスか、山形さん」
白布がまた白い顔で掠れ声を出した。
「・・・女のコなんていたか?・・・いた?」
大平に振られて牛島が首を捻る。しばし考え込んでから、キッパリと答える。
「いや。見ていない」
「一緒に帰んなくて良かったのか?お前らの事、ずぅっと見てたっけぞ?ずぅっとさ」
瀬見の言葉に背中がそそけた。
「あ~あ、言わなきゃいいのに」
天童が頭の後ろで手を組んで笑った。
「言っちゃった。ホラ、皆怖がっちゃってんじゃん」
「何が?」
山形と瀬見が不思議そうに天童を見やる。
残る四人は青い顔で黙りこくった。
「何がって・・・その女ン子?ずっと五色にくっついてたよね。五色が窓に映んないでた間中、だまーってずぅっと五色にくっついて、俺らの事じぃっと見てたよ?何かめ~ちゃっくちゃデカイ目でさ」