第3章 2_ハンター試験
受験者が息を飲む中、リトは遠くから見つめていた。
そして唸り声だと思っていた音は、巨大な男の腹から鳴っていた。
「‥お腹が空きましたね」
自分の腹に手を当てて小さく息を吐く。
空腹で殆ど試験官の話を聞いては居なかったが、どうやら二次試験は料理を作り二人を満足させた者が合格するらしい。
先ずは巨大の男から、豚の丸焼きで森林公園に生息する豚なら種類は自由みたいだ。
「‥豚ですか。‥良いかもしれませんね」
二次試験の開始の合図がされ次々に皆走り出す。
リトは他の受験者とは真逆の方へ脚を動かす。
そして二人の試験官に眼を向け、ジッと見る。
「‥ちょっとアンタ、何してんの?行かなくて良いの?」
試験官の一人、メンチが脚と腕を組みながら問う。
「‥僕は、‥余り、命の重さを、理解していません。‥豚は勿論、人が死ぬのも何とも思いません」
メンチは黙って目の前で話す受験者を見つめる。
「‥僕は‥此処で脚を止める事は出来ないんです。‥僕が此れから‘殺す’事を、許してくれますか‥?」
暫く三人の間で沈黙が続く。
「‥‥アンタに何が有ったのかは知らないし、聞かないけど此れはハンターになる為の試験よ?其れにあたしが今回求めてるのは未知なものに挑戦する気概よ!!」
「‥‥」
「てゆーかあたしもさっき一人殺りそうになったし。‥生きてく中で必ず命と向き合わないといけない時が有るわ」
「‥‥」
「‥行って来なさい。大丈夫よ」
メンチは少し微笑みながら立ち上がりリトの頭にポンッと手を乗せる。
「‥はぃ。‥あの、其れてもう一つ良いですか?」
「どうしたの?」
「‥今、僕のお腹はそちらに居る試験官さんと同じで呻き声をあげてます」
「‥あ~、アンタもお腹が空いてるって訳ね。‥良いわよ、時間はまだ有るし。あっ、そうだ。名前教えてよ」
「‥(‥何方の名前を言うか、‥別にもう逢うことは無いですね)‥有り難う御座います。‥僕はリトです。‥‥貴方の名前を伺っても?」
「リト、ね!あたしはメンチよ!で、此方がブハラ。試験、頑張ってね」
メンチの言葉に頷き、リトは二人に背を向ける。
そしてその場から消えた。
「‥‥」
「‥メンチがあんな事を初対面の人間に言うなんて珍しいね」
「‥あの子の、‥眼が‥ね」