第3章 2_ハンター試験
「‥キルさん五月蝿いです。少し音量を下げて下さい。‥其れと、私は此処ではリトじゃ無いです。リターンと呼んで下さい」
無表情でつらつらと言われたキルアは関係無しに言い返す。
「お前なあ!どんだけ心配したのか解ってんのか?!ババアなんて毎日煩かったんだぜ?!その上兄貴だって暫くは殺気立ってて近付けなかったんだからな!!」
「‥‥」
「てかいい加減そのキルさんって止めろよ!何回もキルアって呼べって言ってんだろッ!!つーかお前また偽名使ってんのかよ!後その敬語も止めろ!」
キルアの叫びを右から左へ流してキルアと一緒にいた少年に視線を移す。
眼がパチッと合うとリトは帽子を少し深く被り直す。
その様子を見ていたキルアは黙り込み、長い溜め息を吐いた。
「‥ま、詳しい事はまた誰も居ない時に聞くわ。‥良いな、リターン?」
キルアが気を遣った事を理解すると俯きながら眼の前の少年にしか聞こえないトーンで言う。
「‥はぃ」
と、其処でキルアを呼ぶ大きな声が反響した。
「おーい、キルア!早く行かないと遅れちゃうよー?」
「今行く!」
キルアは返事をするとリトの腕を掴む。
「ほら、ゴンが待ってるから行くぞ」
「ぇ‥あ」
そのまま何も言い返せず、引っ張られるままに着いて行く。
「‥キルさん」
「ん?」
「彼は、キルさんの‥友人ですか?」
キルアは一瞬間を開けて言った。
「―――さあな」
***
「オレはゴン!宜しくね!」
「‥ぇと、」
「コイツはリターン。‥オレの知り合い」
たじろぐリトに助け船を出すキルア。
「へぇー!リターンさんは何でハンターになりたいの?」
「‥何となく。受けないといけないって思ったんです。‥あの、呼び捨てで構わないですよ?」
「え?良いの?」
「いーよいーよ。そう言うの気にしないからリターンは」
「そっか、解った!じゃあオレもゴンで良いから!」
リトは返事の代わりに小さく頷いた。
「―――?」
急に後ろを振り向いたリトを不思議に思うゴンとキルア。
「‥今、気のせい?」
呟くリトに代表としてゴンが聞く。
「どうしたの、リターン?」
「いえ、何でも‥(またあの気配‥)」
リト達は気を取り直し走り出す。