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【WJ】短編

第11章 【甘】とっておきのお菓子/及川徹・岩泉一


 こうなってしまっては仕方ない。腹をくくるしかない。そう思ってトイレで渡された衣装と睨めっこ。慌てて準備してくるにも、衣装位はしっかりと厳選すべきだった。絶対に私に似合わなそうな丈の短いワンピース。魔女なら私はあれがいい。白雪姫とかに出てくる黒いマントをかぶった魔女。それも部室にあった筈なのに、魔女は魔女でもこんな魔女なんて、劇には出てきません!思いっきりパーティー用だ。そういえば部長が三十一日にハロウィンパーティーするって言ってたからそれ用かな。


「遥香ちゃんまだー?」
「き、着替えるから!」


 遅いからってトイレまで追いかけてくるか?普通。まあ、このままトイレに籠ってたって仕方ない。私はお気に入りのフランケンシュタインの衣装とメイクを落とし、魔女の衣装に袖を通し、勢いよくトイレのドアを開けると、ドアの前で待っていた徹は扉とぶつかった。


「ほら、やっぱりそっちの方が似合うよ。」
「それ遠回しに自分が女装も似合うって言ってる?」
「違うよ!」


 徹とギャーギャー騒ぎながら部屋に戻った。


「ねえ岩ちゃん!さっきのよりこっちの方が可愛いよね!」
「おう、似合ってるぞ。」


 お世辞だと分かっていても、はじめちゃんに褒められると照れる。


「こんだけ可愛いと変な奴に捕まらないか心配だよ。」
「可愛くないし。」
「何言ってんの!俺に似て超可愛いんだから!自覚持ってよ!」
「彼氏だっていないし、告白されたことないし、私このまま死ぬまで独りなのかも。徹とそっくりな顔に生まれたせいだ。男だったら私もさぞイケメンだったろうに。」
「本気で言ってんの?」
「何が?」
「遥香ちゃんは可愛いよ。」
「自分に似てるからでしょうが!」


 繰り返される同じようなやり取りに腹が立ち、徹の足を思いっきり蹴っ飛ばした。痛いなんて言うけど、鍛えられた徹の足を蹴った私の足の方が痛いわ!


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