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【WJ】短編

第11章 【甘】とっておきのお菓子/及川徹・岩泉一


「遥香ちゃん、確かにね俺と遥香ちゃんはソックリだったと思うよ。でもね、昔程ソックリじゃないよ。」


 私の肩に手をおいて、真剣な顔でそう言う徹。正直言って鏡を見てる気分。私が男だったらイケメンだとチヤホヤされただろうに、生憎私は女。モテモテの人生とは程遠い。


「俺は遥香と及川、似てるなんて思った事一度もねーぞ。」
「え?なんで?私と徹似てるでしょ?」


 はじめちゃんの言葉に驚いた。両親にオバサン、おじいちゃん、おばあちゃん、親戚一同、ご近所さん。散々似てると言われて育ってきた。当の本人達だって似てると思って生きてきたのに。


「及川は男で遥香は女なんだから似てるワケねーだろ。及川の顔見てると腹立つけど、遥香の顔見て腹立った事は一度もねーよ。」
「ちょっと岩ちゃん!俺の顔見て腹立つって思ってたの!?」
「中学の時の及川も腐る程見てきたけど、遥香みたいに可愛くなかったぞ。」


 そう言って私の頭を優しく撫でてくれるはじめちゃん。サラッとそういう事言っちゃうんだから心臓に悪い。


「まあ、これからも彼氏出来なくて、ずっと独りだ、なんていうならそん時は俺が嫁にもらってやるから心配すんな。」
「ちょ、岩ちゃん!そんなの俺が許さないんだからね!」


 突然のプロポーズとも取れるはじめちゃんの言葉に、一気に体温が上昇した。そんな私をお構い無しに喧嘩を始める二人。


「はじめちゃん!それなら私の事、今からもらってくれますか!?」


 その言葉にはじめちゃんはいつもの笑顔を浮かべ、勿論だと言った。どうしよう、大好きなはじめちゃんが今日から私の彼氏なんて。


「及川さん無視して何二人でいい感じになってんの!?もう怒ったからね!
Trick or Treat!お菓子くれてもイタズラしちゃうぞ!」


 そう言って私とはじめちゃんに飛び掛ってくる徹。それを蹴飛ばすはじめちゃん。

 元気づけるつもりで開いたハロウィンパーティーだったのに、私だけ飛び切りのお菓子をもらったみたい。



              …ℯꫛᎴ


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