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【WJ】短編

第40章 【甘】マイヒーロー/岩泉一


「俺が逢崎の事好きだって気付けた場所でもある。」


 私から視線を逸らし、ボリボリと頭を掻き乍そう言った岩泉は少し照れ臭そうだった。
 当時岩泉に対して何の感情も抱いていなかった私は残念乍それをハッキリと覚えていない。及川と馬鹿やってた記憶しかない。


「逢崎、悪かったな。」
「え?」
「お前が俺の事何とも思ってなかったのは知ってた。告白した時、ああいう状況じゃ断りにくかったよな。…そんな状況で告白なんて卑怯な事したって思ってた。」


 あの時の岩泉は本当にカッコよかった。思い返してみれば、岩泉は誰よりもしっかり者で、真っ直ぐで男らしくて、こんないい男、出逢いたくても出逢えない。それを今まで気付かなかった私は馬鹿だったんじゃないかと思った事はあったが、あの告白を卑怯だなんて思った事は無い。


「岩泉。」


 私は隣に立つ岩泉の背中を思いっ切り叩いた。それに大袈裟に痛いと声を上げた岩泉。


「あの時、岩泉が告白してくれなかったら私が告白してたと思うよ。それに私はあの時岩泉が助けに来てくれた事も、告白してくれた事も凄く嬉しかった。だからそんな事言わないでよ。岩泉らしくない。」


 私の気持ちが少しでも岩泉に伝わるように真剣にそう言ったつもりだったのに、岩泉は一瞬驚いた表情をし、笑った。


「人が真剣に言った言葉を笑うなんて酷くない?」
「悪い。」


 悪いとは言ったが、ちっとも悪びれた様子のない岩泉。


「やっぱり逢崎、お前いいな。逢崎のそういう所好きだわ。」


 照れたように話していた岩泉は何処へやら。真っ直ぐ、曇のないその言葉にまたドキドキした。


「遥香。」


 初めて岩泉に名前を呼ばれた。ドキドキし乍岩泉の方を向くと、私達の距離は0cm。柔らかな唇の感覚とそこから広がる温かな体温。ちゅっと音をたてて離れる唇。


「好きだ、遥香。」
「私も大好きだよ、一。」


 愛しい彼の名前を呼び、また私達はキスをした。そして、年越しを祝う花火が上がった。



               …ℯꫛᎴ

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