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【WJ】短編

第10章 【甘】彼はズルイ人/照島遊児


 そうだ、照島君は誰とでもキスをするような人。そういえば、照島君がキスをしてるのだって見たことがある。その時の女の子も彼女とかじゃなくて、照島君とよくつるんでる女の子。だから、私にしたキスだってなんの意味もない。照島君にとってはキスなんて挨拶とかそんなもんに過ぎない。照島君の周りにいる女の子とは違うタイプの私をからかったんだ。だって、授業中も面白いオモチャを見つけた子供みたいに私の事見てたし。そんな、キスされたからって、もしかしたら照島君私の事好きなのかな、とかちょっと思っちゃったけど、違う。からかわれてるだけ。照島君みたいな人が私なんかのこと好きになる訳ないし。


「なんで逃げんの?」


 突然手をつかまれた。振り返るとそこにいたのは照島君。なんで逃げるのっていうか、なんで追い掛けてきたの?追い掛けてきたって事は、アレを盗み見した事がバレてるって事だ。


「ねえ、そういえばさ、キス痛かった?」
「え?」


 ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべる照島君。その質問にまた心臓が跳ね上がる。


「もしかして、初めて?」
「違うよ。初めてじゃない。」


 からかわれてるのが悔しくて、悲しくて。強気な口調でそう返した。だって、実際初めてじゃないし。

 その私の言葉に照島君の表情が変わった。

 あれ?なんか、もしかして怒ってる?なんて、思った瞬間、背中に衝撃が走った。照島君に押され、壁で背中を打った。そして、照島君の両手は私の逃げ道を塞ぐように、私の顔の横。なんで照島君が怒ってるのか分からないけど、これは非常にまずい事態ではないだろうか。


「真面目そうな顔してやる事やってんだ。」


 刺のある言い方をした照島君に顎をつかまれ、そして、キスをされた。照島君の舌が私の口内を犯す。貪るようなそのキスにまた眩暈がした。


「俺の事だけ見てよ。」


 見たことない、照島君の真剣な瞳に目が離せなくて、私の答えを聞く前にまた口を塞がれた。どういう理由で、なんの意味があって、照島君がこんな事をするのか分からない。照島君の言った言葉の意味も私には理解出来ない。自分は沢山の女の子に囲まれて、なんでもない女の子達とキスだってするくせに。もしかしたら、その先も。


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