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【WJ】短編

第10章 【甘】彼はズルイ人/照島遊児


 逃げた所で仕方はない。次は音楽の授業。楽譜を忘れたから先に行っててと友達に言って教室に戻ったのに、私が音楽室に来なかったら友達も心配するだろうし。まあ、音楽室に行った所で照島君はサボりだろうし。何も気にする事はない。音楽室に行こう。本人はいないのだから、この音楽の授業の間に心を落ち着かせよう。そう思って音楽室に行けば、既に照島君はそこにいた。いつも音楽の授業はサボるくせに、なんで今日はいるのよ…!なんて思っていたら、照島君と目が合って、さっきの濃厚なキスを思い出してしまい、恥ずかしくなって慌てて目を逸らし、席についた。
 斜め後ろの席に照島君がいるせいか、落ち着く所か、鼓動は高鳴る一方。そして、やたら感じる視線に、背中からは変な汗が流れた。

 授業が終わり、友達の手を引いて私は慌てて音楽室を飛び出した。どうしたの?と言う友達に理由なんか説明できる訳もなく、トイレ!と答えることしか出来なかった。

 その日の授業は、いつもなら絶対どこかの授業はサボる照島君。なのに、今日に限ってちゃんと授業を受けてるし。チラリと斜め後ろに視線をやればニヤリと笑みを浮かべる照島君。慌てて黒板に視線を戻す。心臓が口から飛び出すんじゃないかって位、私の心臓は煩かった。照島君の視線が気になって、結局六限目が終わってもドキドキがおさまらなかった。

 授業が終わり、照島君はそのまま部活へ。教室から照島君が出て行きホッとした。ようやく放課後になって落ち着きを取り戻した私の心臓。照島君とうっかり下駄箱で会ってしまわないように、照島君が教室を出てから暫くしてから教室を出た筈だったのに、階段で女の子とキスをしている照島君を見てしまった。明るい髪色で、少し日焼けした肌が、なんとも色っぽい女の子。照島君とお似合いだ。
 私は二人にバレないように、降りた階段を再び駆け上がった。


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