第10章 【甘】彼はズルイ人/照島遊児
そう思ったらなんだか悔しくて、照島君の舌を思いっきり噛んでやった。痛みに顔を歪めた照島君。やっと開放された私の唇。
「なんで、こんな意地悪するの?照島君なんか大嫌い。」
嘘。本当は好き。キスだって嬉しいけど、弄ばれるのは嫌。誰とだってキスをするそんな照島君は嫌い。それが私にだけだったらどれだけ嬉しいか。
「なんで?遥香ちゃん俺の事好きでしょ?」
「…なんで、そう思うの?」
「だって、いつも俺のこと見てんじゃん。」
「見てない。」
「見てるよ。」
「気のせいだよ。」
「俺、いつも遥香ちゃんの事見てるからわかるよ。」
その言葉に思わずドキっとしてしまった。なんで、照島君が私の事見てるの?
「なんで?」
「言わなきゃわかんない?」
「…わかんないよ。」
「じゃあ遥香ちゃんはなんでいつも俺の事見てんの?」
それは、だって、好きだから。でも、そんなこと言えないし。
「俺だって、遥香ちゃんと同じ理由だよ。」
ズルい。照島君はズルい。思わせぶりな態度で、確かな言葉は何もくれない。
「言っとくけど、俺、女の子に自分からキスしたの、遥香ちゃんが初めてだよ。
ねえ、もっかいキスしてもいいよね?」
そんな事言われたら、イヤだなんて言えないよ。縮まっていく照島君との距離。私は、目を閉じてそれを受け入れた。今度は触れるだけの優しいキス。
「俺の事、どう思ってる?」
「…好き、です。」
「よく言えました。」
そう言って私の頭をくしゃくしゃと撫でる照島君。私に向けられた笑顔、それは私が彼に夢中になったバレーをする時の、楽しそうな笑顔。どうしよう、胸の動悸も、この熱も治まりそうにない。
「照島君は、私の事、好き…ですか?」
「同じ気持ちって言ったろ?」
ほら、照島君はズルい。
…ℯꫛᎴ