第7章 【切】それは不毛な恋でした/赤葦京治
赤葦さんの美しいフォームに見とれながらボール出しをするのは、凄く嬉しくて楽しい時間だった。赤葦さんの時間を独り占め出来る事が嬉しかった。その為、ついつい時間を忘れてしまい、外はすっかり暗くなっていた。
「もう暗いし送っていくよ。」
「いや、そんな、悪いです!」
「ほら、帰るよ。」
なんて、一応断りを入れたけど、心の中ではガッツポーズ。白福さんに悪いと思いながらも、これくらいならいいよね?と自分に言い聞かせ、赤葦さんの好意を受け取る事にした。
外はまだ雨が降っていて、足元に気をつけながら暗い道を赤葦さんの隣を歩いて帰った。部活中、赤葦さんと話す事はあるけど、こうやって二人っきりなのは初めてで、何を話せばいいのか分からなかった。赤葦さんは元々お喋りな方ではなく、何方かと言えば無口な方で、帰り道は一人私が喋ってるような感じだった。でも、それでも、私は赤葦さんと一緒にいれることが嬉しかった。
ふと、赤葦さんが歩く足を止めた。
「赤葦さん、どうしたんですか?」
赤葦さんの視線の先を追うと、大通りを挟んで向こう側に白福さん。そして、その白福さんと同じ傘に入り、手を組んで歩く、私の知らない男の人。それをまっすぐに見つめる赤葦さん。
「し、白福さんって、お兄さんいたんですね!」
なんて声を掛けたらいいのか、分からず、咄嗟に出た言葉。白福さんは確か、一人っ子。お兄さんなんていない。でも、もしかしたらこれは漫画とかでよくある従兄弟でした、だとかそんな展開かもしれない。だって、赤葦さんっていうこんな素敵な彼氏がいるのに、白福さんが浮気なんて、絶対する訳ない。
「嗚呼、あの人バレー部の前主将。」
前主将ということは、木兎さんの前の主将ってことで、大学生!でも、その前主将が何故白福さんと?赤葦さんが戸惑ったり焦ったりした様子じゃないから察するに、親族か何かなのだろうか。
「お二人、仲が良いんですか?従兄弟とか幼馴染みとかですか?」
「白福さんの彼氏だよ。」