第39章 【甘】そのワンコ、野獣につき要注意/灰羽リエーフ
「やっぱり外は寒いね。」
季節は十二月。雪こそは降ってないものの、外の空気はひんやりと冷たく、風が更にその寒さに拍車をかける。沢山動いて温まった筈の体は、ひんやりとした空気によって一気に冷やされる。先程まで温かった筈の指先はあっという間に氷のようだ。
「こうやったら、ちょっとは温かくなりますよ。」
そう言って、長く綺麗なリエーフ君の指が、私の指を絡めとる。大きなリエーフ君の手にすっぽりと包まれた私の手は、リエーフ君の体温によって徐々に温められていく。リエーフ君の顔を横目で見ると、嬉しそうな笑みを浮かべており、それを見て私も幸せな気持ちになった。その手の温もりが私の心まで温めてくれてるような気がして、何だか優しい気持ちになる。
「お腹空かない?」
「そうっすね!」
「肉まん買おう!」
そう言ってコンビニに寄り、自分の肉まんとリエーフ君の為にピザまんを購入した。お金を払おうとするリエーフ君を制止しお金を支払った。可愛い後輩に肉まん位奢ってあげたいもの。
「はい。」
「ありがとうございます!」
コンビニを出て、早速先程購入した肉まんを包みから出すと、白い湯気が現れる。それをそのままぱくりと食べる。寒い日の肉まん程美味しいものはない。
「遥香さんに買って貰ったから今日のピザまんは一弾と美味しい!」
誰が買ったってピザまんが美味しい事は変わらないのに、そう言って大袈裟に喜んでピザまんを食べるリエーフ君。無い筈の尻尾がぶんぶんと振られてるように見える。
バスケ部の後輩達もリエーフ君位可愛げがあればいいのに。残念乍、私がマネージャーを務める男子バスケ部はリエーフ君のような可愛げのある後輩がいない。どちらかというと生意気で、私を先輩と思ってるのかさえ怪しい所だ。だからといって、自分の部の後輩が全く可愛くないと思ってる訳では無いのだけど、リエーフ君を見ると、どうしても比べてしまう。