第36章 【切甘】居場所/白布賢二郎
「バス来てんぞ。…まだ泣いてたのかよ。」
試合が終わってからも涙が止まらなくて、迎えに来てくれた白布さんにそう言われた。
「だって、悔しくて…。」
そう言って泣き続ける私の頭を白布さんが撫でてくれた。試合に負けて悔しいのはコートに立った白布さんの方なのに。マネージャーの私が選手に気を遣わせてどうするんだ。
「まあ、お前のそういう所見れて少し安心した。」
普段は冷たいくせに、こういう時に優しくするなんて、白布さんはずるい。
「…だって、私白鳥沢大好きですもん。」
いつの間にか私に取って特別な場所となった白鳥沢。これも全部白布さんの言葉と大平さんのフォローがあったからだ。あの時二人が声を掛けてくれなかったら私は変われないままで、及川徹の妹でしかなかった。
「白布さんのおかげで大切な事に気付けました。大好きな白布さんのいる大切な場所で私もまた頑張ります。だから白布さんも烏野にも青城にも…何処にも負けないで下さい。」
「…恥ずかしげもなく、サラッと言うな。」
「思った事は留めておけない質なので。」
「…まあ、俺も遥香のそういう所好きだけど。」
少しだけ照れたようにしてにそう言ってくれた白布さん。