第36章 【切甘】居場所/白布賢二郎
それから出来る限りの事は何でもやったし、頼まれてもないけど、他校の情報収集や解析も行った。これがやり出してみると意外と結構ハマった。各選手の分析なんかやり出してみると楽しい。徹がなんで夢中になって色んな学校の試合のDVDを見てたか今なら分かる。だからと言って徹が好きになったとかはない。相変わらずムカつくしウザイし嫌い。
そんな私を部員達は認めてくれ、青城の及川に情報を流す為に白鳥沢に入ったとは言われなくなった。まあ、それは部活に限っての事で、レギュラーの先輩達のファンに捕まってあれやこれやと言われる事はあったが、前ほど気にはならなかった。これも全部白布さんと大平さんのおかげだ。
中学時代の私は自分で自分の居場所を作るなんてやろうと思わなかった。だって、私が徹の妹である事は事実だったし、徹をよく知る北一の皆にとって私は及川妹でしかなかったから。でも、それは私の頑張りが足りなかったからだ。全部徹のせいにして頑張る事から逃げてたからだ。
そして迎えた春高バレー宮城県代表決定戦。例年通り決勝に上がってくるのは青城だと思っていたのに、青城は烏野に破れた。徹の悔しそうな顔を見れて心が晴れると思ったのに、インターハイの時と比べるとそんな感情は不思議と湧き上がって来なかった。
決勝戦、烏野との初めての公式戦。白鳥沢が勝つと思っていた。けど、白鳥沢は烏野に負けた。徹に対する嫌がらせの為に入った白鳥沢。烏野に負けたって悔しくない筈だったのに、不思議と目から涙が溢れた。負けるなんて思わなかったっていうのもあるけど、多分この涙の理由は、いつの間にか私の大切な場所になっていた白鳥沢が春高に出場出来ず、烏野に負けたからだ。こんな風に思う日が来るなんて、想像もしてなかった。