第36章 【切甘】居場所/白布賢二郎
「ウチはスポーツ推薦も多いし、そんな連中差し置いて二年生の賢二郎が正セッターなんて、最初は反感もあったよ。けど、それをねじ伏せる為に賢二郎は誰よりも練習に励んだ。今となってはバレー部に賢二郎が何故正セッターなんだ、なんて言う奴はいない。」
白布さんみたいな人が私の気持ちなんて分かるわけない。そう思ってたのに、もしかしたら白布さんは誰よりも私の気持ちを理解してくれる人だったのかもしれない。それなのに私は白布さんの助言を無視し暴言を吐いた。
「だからな、賢二郎は遥香にも誰にも文句を言われないよう頑張って欲しかったんだと思うよ。けど、そういうの理解しやすいように話す奴じゃないから、気分を害したかもしれないけど。」
「大平さん、教えてくれてありがとうございました。」
多分あの言葉の意味は、他の誰にも文句を言わせないよう頑張れって事だったんだ。思い返してみれば、言葉の一つ一つ冷たいように見えたけど、どれもこれも頑張れって意味の言葉だった気がする。努力しない人間に最初から居場所が与えられる訳が無い。白布さんだって苦労して今のポジションを手に入れた筈だ。それを私は知りもせずに失礼な事を言ってしまった。
「白布さん。」
「…何?」
返事はしてくれるけど、こっちは見てくれない。まあ練習中だし仕方ない。監督戻って来たら私語なんて怒らるだろうから手短に。
「先日はすみませんでした。何も知らずに失礼な事をいい言いました。私も白布さんに負けないように、ここで頑張ってみようと思います。」
背を向ける白布さんに頭を下げ、マネージャーの仕事に戻った。
今までは、当たり障りない程度にただなんとなくやっていたマネージャー業。及川妹だとか情報流す為だとか好き勝手言われないようにちゃんとやろう。両頬を思いっきりパチンと叩き気合いを入れた。皆に認めてもらう為に自分の居場所は自分で作る。徹のせいにしていた自分とサヨナラするんだ。徹と離れ白鳥沢に来た今がチャンスだ。