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【WJ】短編

第36章 【切甘】居場所/白布賢二郎


「青城の及川の妹さ、本当は青城に情報流す為に入ったんじゃねえのかな?」
「それ、俺も思った。」


 聞くつもりはなかった。でも聞こえてしまった。チームメイトから向けられた言葉。そんな風に思われるんじゃないかって覚悟はしてた。私が徹に情報を流すなんて有り得ないのに。でも白鳥沢の人は私がどれだけ徹の事を嫌ってるか知らないからそう思われても仕方ない。
 抱えていたスクイズが入ったケースを態とらしく音を立てて彼等の前に置けば、気まずそうに私を見る。別にアンタ達になんと思われようと構わない。白鳥沢が青城にさえ勝ってくれるなら。徹の悔しそうな顔が見れるなら。


「ここ、置いとくね。」


 私が白鳥沢に来たのはバレーの強豪校に行きたかったからじゃない。ウシワカに魅力を感じたからでもない。大嫌いな徹の嫌がることをしたかったから。だから別に誰になんと思われようと構わない。


「言い返さないのかよ?」


 先程の彼等の言葉を聞いていたのか、私が持ってきたスクイズを飲みながらそう訊ねてきた白布さん。


「言い返した所で意味あります?何を言ったって私が徹の妹である事は事実だし。」


 どんなに嫌だと思っても私が徹の妹である事は事実。どう足掻いたって変えられない。


「好き勝手言われて嫌じゃねーの?」


 そりゃあ勿論嫌に決まってる。大嫌いな徹に情報を流す為に白鳥沢に入られてるなんて思われてるのは不愉快極まりない。けど、私の気持ちを他の誰かに共感してもらいたいだとかそんな事は思ってない。ここで仲良くバレーをしようなんて思っちゃいないんだから。

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