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【WJ】短編

第34章 【切甘】近過ぎて見えなかったもの/瀬見英太


「五色、逢崎さんを抱き締めろ。」
「いや、ちょっと白布さん意味分かんないんですけど…!」
「いいから早くしろ。俺は気が短いんだ。」


 物凄い迫力でそう白布君に言われた五色君は、すみません失礼します!と言って私を抱き締めた。え?ちょっと、何?意味分かんないんだけど。白布君が何故五色君にそうさせたのかも分からない。いや、そもそも意味なんてあるのだろうか。ていうか、五色君も何言われた通り私の事抱き締めちゃってんだ。


「工、お前何やってんだよ!」


 先程まで一番向こうの席でいつも通り皆と食事を取っていた筈の英太によって私と五色君は引き離された。


「あれ?瀬見さんどうしたんですか?」


 そう英太に尋ねる白布君の目は笑っているように見えた。


「白布、お前も止めろよ。ここ学校なんだぞ。場所をわきまえろ。」
「五色、そういうのはお前の部屋で二人の時にやれってさ。」
「いや、そういう事じゃねえよ!」
「場所をわきまえたらいいんですよね?」
「…コイツはダメなの。ほら、遥香あっちで食うぞ。」


 そう言って、私のプレートを持って英太は覚達のいる方へ歩いて行ってしまった。


「嫉妬ですね。」


 そう呟いた白布君の言葉に何だか胸の突っかりがスッと溶けていくような気がした。


「こういうことですよ、逢崎さん。昨日から散々皆に言われたんでしょう?そろそろ気付いたんじゃないですか?自分の気持ちと瀬見さんの気持ち。」


 白布君の言葉に思わず顔が赤くなった。皆に散々言われた言葉の意味をここにきて、漸く理解出来た。こんなにも英太の事で悲しくなったのは、私が英太の幼馴染みだからでも親友だからでもない。英太の事が好き…だったからだ。


「…皆、分かってたの!?」
「二人共わかりやす過ぎですからね。二年もそれを見せつけられてる俺の気持ちにもなってください。いい加減くっつけと何度言いそうになった事か。」

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