第34章 【切甘】近過ぎて見えなかったもの/瀬見英太
「それは…どうも、すみませんでした。」
「ほら、早く行かないと瀬見さん凄い顔で見てますよ。」
「白布君、五色君ありがとう!」
二人にお礼を言って英太の元へと走った。
「おせえよ。何話してたんだよ?」
英太の事を好きだと気付いた。だから、いつも通り話掛けてくる英太になんて応えればいいのか分からなかった。好きだって気付いたからっていきなりしおらしくなるのも変だし。てか、私が英太を好き…とか。認めたけど、認めたけどさ!
「あのさ、進路の事だけど、」
「え?うん。」
「…悪かったな。何も相談無しに決めて。」
「いや、いいよ。そもそも家族でも彼女でもない私に相談する事の方がおかしいし。」
「じゃあ進路の事もっかいちゃんと話したいから、彼女になってくれる?」
「は?」
「彼女なら相談乗ってもおかしくねえんだろ?」
「いや、ちょっとなんでそうなんの!?」
そうは言ったものの思いがけない告白にドキドキしたし、それ以上にその言葉が嬉しかった。
「いや、皆にもそうだけど…さっき川西に、自分の気持ちに気付かないフリをしてお前を一人宮城に残して上京するなら俺がもらいますねって言われたから。川西のモノになる前に俺のモノにしておこうと思ってだな、」
「馬鹿じゃないの?後輩に取られたくないからとか子供か。私服だけじゃなくて考え方とか、そういうハッキリしない所もダサい。」
「私服は関係ねえだろ!」
「…でも、そういう英太の事、私好きなのかも。」
「ちょ、今のもう一回…!」
「もうなんて言ったか忘れましたー。」
親友歴十八年。その十八年に終止符を打って、今日から彼氏彼女としての一日目が始まりそうです。
…ℯꫛᎴ