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【WJ】短編

第34章 【切甘】近過ぎて見えなかったもの/瀬見英太


「瀬見が東京の大学に進学する事と関係があるのか?」
「ちょっと、若利まで何言ってんの?」
「あーなるほどね。」
「なるほどって何がよ!?」


 英太が東京に行くことと私がさっき英太を蹴った事。それが隼人の中では繋がったらしく、意味深な笑みを浮かべた。


「高校生も終わるって時にやっと気付いたか。」
「いや、何?ホント意味分かんないんだけど。」


 そう言うと、隼人は大きな溜息を漏らした。いや、溜息つきたいのは私だから。なんで若干呆れ顔な訳?昨日の獅音といい、今朝の川西君といい、何だって言うんだ。


「遥香はさ、英太に彼女が出来ても今まで何とも思わなかったろ?」
「え?うん。」
「それってさ、心のどこかで英太の一番は自分だって思ってたからだろ?でも、英太が上京するって、離れ離れになるって思ったら、急に不安になってきたんだろ?」
「意味分かんない。」
「…ここまで言っても分かんねえのかよ!鈍いってのはこの三年間の付き合いで知ってたつもりだけど重症だな!」
「まあ英太の事はどうでもいいから隼人数学の課題写させてよ。」
「逢崎、課題とは自分でやる事に意味があるのだぞ?」
「若利にそう言われると思ったから隼人に聞いたの。多少間違ってても許してあげるから隼人見してよ。」
「断る。」
「隼人のドケチ!」


 いつもならちゃんとやってくる課題だけど、昨日はあのまま不貞腐れて寝てしまったから課題をやってなかったけ 。いつも見してもらってる訳じゃないんだからいいじゃない。
 数学の授業までに課題をやり遂げられなかった私は元々の三倍の量の課題を出された。これだから進学校は嫌なんだ。量さえ増やせばいいと思って。くそ、隼人め。覚えてろよ。


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