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【WJ】短編

第33章 【甘】そのままの君でいて/爆豪勝己


 そして最近になって、そのからかいはまたヒートアップしていった。なんでも、お兄ちゃんが名高い有名ヒーローを年々輩出する雄英学園ヒーロー科を志願してるというのが噂になってるらしく、それが皆にとっては可笑しくて堪らない事ならしい。


「お前の兄ちゃん雄英志望なんだって!?無個性の癖に超ウケる!」


 下品な笑い声をあげ、大笑いする目の前の不良達の言葉はずしんと私の心に響いた。無個性だからって雄英に行くのがそんなのおかしいのか。アンタ達がお兄ちゃんの何を知っているのか。大好きなお兄ちゃんを馬鹿にされ、悔しくて堪らなかった。でも、その言葉をただ黙って聞く事しか出来ない自分の事はそれ以上に腹立たしかった。


「何その顔?文句あんの?」
「私お兄ちゃんのせいでイジメられてるんですー。助けてお兄ちゃーん!とでも叫べば?」
「バーカ!無個性なんだから助けられる訳ねえだろ!」
「それもそうだな!」


 そう言って笑う彼らの言葉にじんわりと涙が浮かんだ。そんな時、激しい爆発音が響いた。その爆発音に驚き顔を上げると、お兄ちゃんを馬鹿にする同級生二人組の後ろに頗る機嫌の悪そうな勝己君の姿。


「…オイ、お前ら何してやがる?」
「ひっ!ば、爆豪さん…!」
「な、何もしてないです!い、行こうぜ!」


 勝己君の姿を見るなり一目散に去っていく彼らの背中に心の中で暴言を吐いた。
 彼らがいなくなった事で、勝己君と向かい合う形になった私。勝己君の姿を見て安心したせいか、自然と目から涙が溢れた。


「…泣くな。」


 勝己君は私の涙を拭いてくれた。


「ちっとは言い返せよ。つーかやり返せ。」
「誰かを懲らしめる為に個性は使いたくない。人を守る為に使いたい。」


 口にこそは出さないものの、私だってヒーローになりたい。笑顔で人々を救うオールマイトに憧れている。でも、無個性であるお兄ちゃんがいる以上、ヒーローになりたいなんて言える訳ない。その言葉は大好きなお兄ちゃんを傷付けてしまうから。

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