第32章 【甘】独り占め願望/国見英
国見君はブラウニーが焼けるのが待ち遠しいのか、オーブンの前に椅子を並べ、そこからじっとオーブンを眺めていた。その間、私は再びコンロへと向かい、鍋に砂糖、ココアパウダー、塩を混ぜ入れ、そこに水を加え一分間沸騰させ、一分経ったところで牛乳を入れ、温めた。バニラエッセンス、ヘーゼルナッツシロップ、キャラメルソースを入れ混ぜたそれをマグカップに注ぎ、ホイップクリーム、キャラメルソース、塩をトッピングした。そして出来立ての特製塩キャラメルホットチョコレートを国見君へと渡した。
「これ、結構美味しいんだよ。ホットドリンクだから学校には持っていけないのが残念なんだけど。」
国見君はマグカップを受け取り出来立てほやほやの塩キャラメルホットチョコレートを飲むと、目をキラキラと輝かせ、美味しいと呟いた。
「これもさっきの塩キャラメルソースで作れるから、あとでレシピ書いた紙渡すね。」
そう言って私も椅子に腰を下ろし、塩キャラメルホットチョコレートを飲む。最近また寒くなってきたから、余計美味しく感じる。
「俺さ、他人の手作りダメなんだ。」
「うん、知ってるよ。」
「昔は大丈夫だった…ていうか、気にしなかったんだけど、中一の時バレンタインに貰った手作りのチョコレート食べてすげー吐いた。それ以来他人の作った物信用出来なくて、翌年からは手作りの物は受け取らなかったんだけどさ。」
学年一の美少女のチョコレートを断った理由にはそんなワケがあったのか。その理由に納得しつつも、とばっちりを受けてしまったその美少女を憐れに思った。にしても、激しい吐気を催すチョコレートとは一体どんなチョコレートだったのかとそっちに興味がわいた。
「でも、逢崎の友達がいつも美味しそうに逢崎が作ったお菓子食べてるの見てたからなんか興味わいた…っていうか、俺も食べてみたくて。で、食べたら想像以上に美味かった。」
「…ありがとう。」