第30章 【甘】言葉の真意／岩泉一

　準々決勝が終わったばかりだというのに、その後準決勝がそのままあるらしく、私はドキドキしながら準決勝が始まるのを待った。そして始まった準決勝。相手は昔強かったっていう烏野高校。目付きの悪い人や、大人みたいな人もいて、なんだか怖いと感じたそのチーム。試合は大接戦で、セットを取られ、取ってのフルセットでの試合。岩泉さんがスパイクをする姿は勿論カッコよかったけど、強烈なボールを拾う姿もカッコよくて、でも、一進一退のその試合、やはり先程の試合と同じく、お祈りポーズで試合を見守っていた。思わず目を瞑りたくなるような瞬間もあったけど、岩泉さんのバレーをしてる姿を一分一秒でも長く視界に留めておきたくて、試合を食い入るようにみた。
　先にマッチポイントを迎えたのは青城だったけど、そこからデュースにもつれ込み、今度は烏野のマッチポイント。そして、烏野の大人みたいな人が打った強烈なスパイクを拾えたものの、ボールはコートの外へ。ああもうダメだ！そう思ったのに、及川さんはそのボールを追いかけ、岩泉さんにトスをあげた。その及川さんからのトスを打った岩泉さんのスパイクは、今日見たどのスパイクよりもキラキラ輝いて見えた。でも、そのスパイクは決まらず、結果、烏野の小さな男の子の打ったスパイクが及川さんの手にあたり、青城コートへと転がった。無情にも試合終了のホイッスルが鳴った。
　応援席に頭を下げにやってきた皆の顔は涙でぐちゃぐちゃで、岩泉さんも同じだった。試合には負けてしまったけど、誰よりもカッコよくて、輝いていた彼らに拍手を送った。