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【WJ】短編

第30章 【甘】言葉の真意/岩泉一


 それから気がつけば、自然と岩泉さんの事を目で追っていた。元々何か接点がある訳でもないし、あれ以来話せてすらいない。いや、接点があった所で話し掛ける勇気なんてないけども。
 そんな気持ちを抱えたままやってきた春高宮城県代表決定戦、準々決勝。初めて生で見るバレーの試合にドキドキしながら、及川さんのファンである友人と共に応援へと向かった。相手選手の殆どが岩泉さんよりも大きくて、そんな中、どうやってボールを相手コートに入れるのかとドキドキしながら試合を見守った。青城だってバレーの強豪校とは言われてるけど、今日の相手である伊達工もバレーの強豪校として有名ならしい。掲げられた弾幕にある鉄壁という文字は、コートの選手を示すに相応しい言葉だと思った。
 得点が決まる度に歓喜の声が響く中、私はもう声をあげることもできず、両手を合わせ、祈るように試合を見ることしか出来なかった。だって、バレーの試合がこんなにも激しくて恐ろしいものだとは思っていなかったから。あんなボール触ったら腕がもげてしまいそう。
 ドキドキし、生きた心地がしないまま迎えた青城のマッチポイント。岩泉さんのスパイクは伊達工の選手のブロックに阻まれ拾われてしまった。そして拾われたボールを金髪の男の子がネット付近から強く叩き、それを返せず、向こうの得点に。第一セットも青城が取ってるし、あと一点で勝ちだというのに、どうしてこうもドキドキしてしまうのか。


「岩ちゃん!」


 及川さんに名前を呼ばれ、岩泉さんがそれに合わせて助走をつけたが、伊達工の長身三人組がそれに合わせブロックについた。やだ、お願い、やめて…!そう思いながら、そのスパイクの行方を見守った。そして岩泉さんのスパイクは金髪の男の子の腕の間をぶち抜き、相手コートへ。


「…す、っごい。」


 あんな大きな選手を前に、あんな風に戦える岩泉さん。そんな彼のカッコいい姿に、感動して思わず声が漏れた。チームメイトに頭を撫でられ、誇らしそうに笑う岩泉さんを見て心が温かくなった。


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