第27章 【切甘】ホンキ/照島遊児
嗚呼、馬鹿だな私。照島君にキスされて嬉しかった。同じ気持ちだって言ってくれて嬉しかった。でも、照島君にとってのキスは挨拶みたいなもんだし、同じ気持ちとは言っても好きだと言ってくれた訳じゃない。どうせ午後からの授業はあの子と早退して、どっちかの家でそういう事するんでしょ?そう思ったら自然と涙が溢れた。
「…馬鹿みたい。」
照島君が私みたいな地味な女に好きになる訳ないじゃない。そんなの少し考えれば分かる事。
「…遥香ちゃん!」
名前を呼ばれ、手を引っ張られた。そして、そのまま抱き締められた。
「てる、し、まくん…!」
さっきの女の子はどうしたのか。何で私を追いかけてきたのか。なんで私の事抱き締めたりなんかするのか。
「やだ…!離して!」
照島君の胸から逃れようと、照島君を押すが、ビクともしない。
「頼むから、俺の話聞いて───!」
そう言って無理矢理奪われた唇。もう、ヤダ。なんで、なんで…っ!
「離してっ!」
思い切り照島君を押すと、その勢いで照島君はその場に尻餅をついた。
「照島君なんか嫌い…!大嫌い!」
それを聞いた照島君の表情は何処か悲しげだった。なんでそんな顔するの?悲しいのは私の方なのに。
「…俺は、好きだよ。」
「…嘘。」
「ずっと、ずっと好きだったよ。どうにかして仲良くなりたいって思ったけど、俺、こんな気持ち初めてで、どうしていいか分かんなくって、」
真剣なその瞳に、私の心は揺らいだ。
「同じ気持ちって知って嬉しかった。なのに、嫌いなんて言うなよ…。」
好きな人からのこれ以上とない台詞に、それ以上言葉が出なかった。
「本当だから。確かに付き合ってもない子とキスだってしてたけど、俺からした事はない。俺が好きだって、キスしたいって思うのは遥香ちゃんだけだから。ねえ、俺の彼女になってよ?」
その照島君の言葉を信じていいのか、少し悩んだ。また私をからかってるんじゃないかって。