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【WJ】短編

第27章 【切甘】ホンキ/照島遊児


「…分かった。」


 背に腹は変えられない。意を決して、照島君にキスすべく、彼の肩に手を置いて、背伸びをした。


「てるしー!」


 普段人気の少ない非常階段に、明るい声が響いた。現れたのは、照島君とよく一緒にいる女の子。


「あれ?私もしかしてお邪魔だった?」


 照島君にキスをしようとした所を見られ、私は慌てて照島君から離れたが、バッチリ見られてしまった。あんな体制じゃ、誤魔化そうにしても無理がある。


「いや、別に邪魔じゃねーよ。」


 照島君のその言葉を聞くと、彼女は照島君の腕に抱き着いて、甘ったるい声で照島君に話し掛けた。


「ねえ、今日部活休みなんでしょ?」
「そうだけど、なんで知ってんの?」
「母畑に聞いた。でさ、休みなら遊び行こうよ放課後。」
「いいけど、何処行く?」
「私の家かてるしーの家。いいでしょ?」


 これって、完全にそういうお誘い…だよね。一応私もいるんだけど、彼女に取って私は居て居ない存在なのか、執拗に照島君に密着し、照島君を誘う。それを見て私の中で徐々に膨らんでく嫉妬心。彼女でもない私がそんなものを抱いて一体どうするのか。今まで、ただ見る事しか出来なかったのに、キスした位で照島君の取り巻き達と同じ土俵に立てたつもりでいた自分が恥ずかしくて堪らなかった。…そうだ、照島君は誰とでもキスをする人。その気紛れが今回私に向いただけで、照島君は私と同じ気持ちなんかじゃない。きっと私の事からかって楽しんでるんだ。一人でごちゃごちゃ考えて、本当馬鹿みたい。


「遥香ちゃん何処行くの?」
「…教室戻る。」
「てるしー、なんならこのまま帰っちゃう?」


 二人の姿をこれ以上見ていたくなくて、私はその場を走って逃げ出した。

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