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【WJ】短編

第23章 【切甘(R18)】閉じ込めた恋心/及川徹


「及川君ありがとう。」
「どういたしまして。」
「遥香ちゃん先生。」


 カーテンからひょこっと顔を出した矢巾君。体調が悪いと言って微熱だった為、薬を飲んで寝ていたのだが、目が覚めたようだ。矢巾君の顔は赤く火照っていた。


「あれ?矢巾どうしたの?」
「あ、及川さん。なんかちょっと調子悪くて。」


 カーテンから顔を覗かす矢巾君の元に駆け寄った。


「矢巾君、熱上がったんじゃない?」


 矢巾君の前髪をあげ、自分のオデコと矢巾君のオデコをくっつけた。さっきよりも熱い。


「ちょっとまた熱測ってみて。」


 白衣のポケットから体温計を取り出し、矢巾君に渡す。体温計の数値はみるみる上がっていき、電子音が鳴った体温計を覗くと、三十八度六分。


「今日はもう早退しなさい。担任の先生には私が言っておくから。」
「…わかりました。及川さん、すみません、今日部活休みます。」
「私荷物取ってくるから。」
「いや、大丈夫です。自分で取りに行きます。」


 鼻を啜りながら辛そうな足取りで矢巾君は保健室を出て行った。


「遥香ちゃん先生。」


 及川君に名前を呼ばれ、振り向こうとしたが、手を強い力で引かれ、そのまま矢巾君がさっきまで寝ていたベッドに押し倒された。


「…ちょっと及川君!悪ふざけはやめて。」


 押し返そうとするけど、ビクともしない。いつもより近くにある及川君の顔。そしてこの体制。心臓が騒ぎ出す。


「遥香ちゃん先生、いっつもあんな事してんの?」
「あんな事…?」
「矢巾だって男だよ。あんな事されたらこういう事したくなるでしょ?」


 初めて見る男らしい表情の及川君。徐々に近まる距離。反射的にわたしは目を瞑った。が、今度は手を引かれ、起こされた。てっきり、キスされると思ったのに。…って私何を…!そんな私の顔を見て及川君は笑った。


「もう!そういう冗談はやめてよ!」
「遥香ちゃん先生可愛いんだし、こういう事したいって思ってる奴沢山いるよ?だから危機感をちゃんと持って欲しかっただけ。それに俺は遥香ちゃん先生にはいつだって本気だよ。」
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